2017/07/23

wowow「ひつじ村の兄弟」感想

 第68回カンヌ国際映画祭<ある視点部門>グランプリ受賞作品。
 アイスランドの人里離れた山村で、隣同士に住む老兄弟グミーとキディーは超変人。女性とまともな会話ができないため、二人ともずっと独身。ただ、羊の飼育に関しては村で一番二番を争うほど。毎年村の羊コンテストで優勝、準優勝を獲得したりする。ところがこの兄弟、隣に住んでいながら、この40年もの間全く口をきかないほどの不仲。どうしても会話が必要な場合は、飼い犬に手紙を託すという、非常に古典的な手段を使うのだ。

 ある日、兄キディーの羊がスクレイピーにかかっていることが判明。規則により、村の全ての羊は殺処分、羊小屋も全て殺菌焼却処分しなければならなくなる。村の羊飼いたちは皆、断腸の思いで飼っていた羊を処分する。もちろん、政府から補償金は出るのだが、ここまで何世代もかけて優秀な遺伝子を育て上げてきた兄弟にとって、処分される羊たちは、もはや金では買えない価値のあるもの。

 というわけで、弟のグミーは掟破りの行動をとる。しかもそれが、ずっと不仲だった兄弟が共同戦線を張るきっかけとなるのだ。ざっくり言うと本作、兄弟が仲直りする話なのだ。

 ラストの伏線として、何度も兄弟の入浴シーンが出てくる。年取った爺さんの裸なんか見たくもないのだが、これがラストの伏線になっているのだから面白い。

 羊がやたらとかわいい。とくにラストシーンで夜の山岳地帯を駆けていくシーン。きゅっとひきしまった足首と、もふもふの毛のコントラストがなんとも言えない。

 最後のスタッフロールで流れる曲も実に素晴らしい。

 で、結局羊はどうなったの(笑)?

 

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2017/07/09

wowow「グッドネイバー」感想

 最近じいさんが主役の映画を立て続けに観ているような気がします。これも高齢化社会の影響でしょうか?

 さて本作、隣に住んでいる偏屈な老人の家に、無線装置を使って怪奇現象を発生させ、老人が驚く様を盗撮して楽しもうという、ろくでもない若者二人組が主人公。二人組の、イーサンのほうが、とにかくむかつく大馬鹿野郎で、観ていて胸くそ悪くなってきます。いちおう最後のほうで、イーサンがなぜこんなことをしたのか、その動機が説明されます。だからといって、彼らの行いを許す気には、さらさらなれませんが。

 次に老人のほう。彼は次々に起こる怪異現象にまるで動じず、しばしば地下室にこもるので、若者二人組は、絶対地下室に何かあると思い込みます。たしかに地下室には何かあります。それは最後に明かされるのですが、ドラマの途中で何度か、老人の過去の記憶が映像として挟み込まれます。これがヒントとなっています。

 最初はこの老人、近所迷惑な偏屈じじいとして描かれます。犬を散歩させている人を見かけたら、「ちゃんとしつけておけ。さもないとこの犬を切り刻んでお前の家に送りつけてやる」みたいなことを言ったり。ところが最後のどんでん返しで、観客はびっくり。私なんかてっきり、じいさんは射殺されたのだとばかり・・・これ以上ネタバレするのはやめましょう。ただ、タイトルはちゃんとこの作品の内容を暗示しているということは、お知らせしておきます。

 思いっきりB級映画ですが、なかなかの佳作だと思います。

 今後も、老人が主役で、なおかつ様々な切り口の映画が増えていく予感がします。

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2017/07/02

WOWOW「セトウツミ」感想

 漫画が原作の映画。

 「セトウツミ」というタイトルは、主人公の瀬戸(せと)と内海(うつみ)の名前を組み合わせたもの。登場人物はほとんどこの二人だけ。

 大がかりなセットや、ど派手な演出一切なし。二人の男子高校生の会話だけで、ドラマは淡々と進行する。

 はっきり言って、映画にする必要性をまったく感じない。

 普通この手の作品は、演劇とか、深夜テレビとかでやるものなのでは? WOWOWで見るくらいが、ちょうどいいんじゃないかと思う。金払って映画館で見るものではない。

 じゃあ、なんでここで紹介するかというと・・・、それは当然おもしろかったからである。

 まずキャスティングが素晴らしい。お調子者の元サッカー部瀬戸を菅田将暉が、クールな秀才高校生の内海を池松壮亮が演じる。今もっとも旬な二人を使って、だらだらとしゃべるだけの映画をつくるという壮大な無駄遣い! でもそれが面白いのだからすごい。

 会話の内容は、瀬戸が片想いしている女の子に送るメールの文面を、内海に添削してもらったりとか、瀬戸が自宅で発生した小バエの駆除に困っていると、その駆除方法を内海が助言したりとか、ほとんどどうでもいいようなことばかりなのだ。

 普通の青春映画なら、「時間をもっと有意義なことに使え」とか、「何かに夢中になって打ち込んでみろ」とか、そういう王道のパターンがあるものだが、本作は真っ向からそれらを否定する。「走り回って汗かかなあかんのか」「なんかクリエイティヴなことせなあかんのか」「仲間と悪いことしたりせなあかんのか」「この川で暇をつぶすだけの青春があってもええんちゃうんか」

 だらだら話すその会話の中に、時々ちらりと青春が見え隠れする。この世の真理が一瞬示されたりする。結構深いのである。

 登場人物は少ないが、皆愛すべきキャラクターとして印象に残る。特に菅田将暉、いい役者だと思う。

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2017/05/21

DVD「エブリバディ・ウォンツ・サム」感想

 アメリカ映画。

 以前、「シング・ストリート」を紹介した時に、

 1980年代に、ピーター・バラカンの「ポッパーズMTV」に夢中になった世代は、まず間違いなく本作にはまるだろう。

と書いたのだが、本作は同じ1980年代でも、舞台がアメリカだから、当然、小林克也の「ベスト・ヒットUSA」に夢中になった世代にお薦めしたい。

 オープニングでザ・ナックの「マイ・シャローナ」が流れてきて、主人公たちが典型的なアメ車に乗り、女の子たちをナンパするシーンを見ただけで、この映画がいかにくだらないことを真剣に映像化しているかが伝わってくる。

 主人公たちは野球の名門大学に特待生として入学し、あと3日で授業がスタートする、そのわずか3日間を時系列に沿って描くという、ヒネりも何もない展開。しかも、野球部なのに、映画が始まってから1時間10分以上たって、やっと練習シーンがあったりする。熱血スポ根ものでは全くないのだ。じゃあ、それまで彼らが何をやっているかというと、ひたすら酒を飲んで、ロック(ヴァン・ヘイレンなどの名曲が次々にかかります!)を聴いて、バーでケンカして、女の子に声をかけて、部屋に連れ込んで・・・というような、青春の無駄遣いを延々と見せてくれる。

 じゃあ本作は観るに値しないかというと、そんなことはない。どうでもいいようなくだらないエピソードの積み重ねが、じわじわと後半になるにつれ効いてくる。まるでボクシングの地味なボディー攻撃のように。

そしてラスト、主人公が初めての大学の講義に出席する時、今まで馬鹿騒ぎばっかりやってきた先輩たちが、突然まともなアドバイスをくれるのだ。このアドバイスを聞いた時に、ああ、これが大人になるっていうことなのかと、しみじみさせられる。

 学生時代にバカばっかやりながら、それでも少しずつ自分が大人になっていく寂しさを、意識の片隅で感じていた、そんな記憶が蘇る。なんとも言えない、鼻の奥がつーんするような懐かしさが、本作にはあるのだ。

 注! 基本的に大人が観る映画です。子供が観ても、ちっとも懐かしさなんか感じないでしょうし、そもそも本作、教育上よろしくないシーンのオンパレードですから(笑)。

 

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2017/05/07

WOWOW「孤独のススメ」感想

 オランダ映画。

 ロッテルダム国際映画祭観客賞、モスクワ国際映画祭観客賞などヨーロッパでは数々の賞を受賞した作品。

 最初からちゃんと伏線は張ってあったのだが・・・、まったく気がつかなかった。まさかラストでああくるとは・・・。あまりの意外な展開に、お口アングリ状態がしばらく続いたくらいだ。

 中盤でも、主人公がある場所に一人で出かけていくシーンがちゃんとあるのだから、いいかげんここで気がついてもよさそうなものだが、やっぱりここでも気がつかず・・・。ああ、自分が情けない(笑)。

 そもそも邦題が「孤独のススメ」とあるから、定年迎えたおっさんが、会社人間から卒業して、自分の趣味に没頭し、「孤独もいいじゃん」とかつぶやく展開かと思って見始めたのだが・・・日本にも「孤独のグルメ」という有名な漫画があるし・・・。

 ぜんっぜん、孤独じゃないじゃん。

 原題が「マッターホルン」であると知ったのは、映画を見終わってから。いや、このタイトルなら納得である。邦題考えた人、誰? わざと「孤独のグルメ」方面へ客を引っ張ろうとしてるでしょ? これ、絶対確信犯でしょ?

 ネタバレになると、まったく面白くないであろうから、一言だけ。本作は束縛から解放される映画なのだ。ラストの感動は保証する。いろんなモノに縛られてもがき苦しんでいる人、本作は必見である。

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2017/04/30

映画「美女と野獣」感想

 ディズニーのアニメ版を観たのは1992年。もう25年も前になりますか。

 さて、実写版の本作。アニメ版の大ファンである私の評価は「微妙・・・」

 理由はいくつかあります。

 一つ。オープニングがくどい。アニメ版はステンドグラス風な演出で、あとは見る方で勝手に想像しておくれというスタンスでした。本作は全部リアルな映像で見せすぎなんですね。全くおもしろくありません。想像力のない人にはこの方が親切なんでしょうが、観客を馬鹿にしてるのか! と言いたくなります

 二つ。歌がいかん! 思い入れたっぷりに歌いすぎです。もともとドラマティックな歌なので、いくらでも感情移入しようと思えばできる歌なのですが、感情移入しすぎればしすぎるほど、本作のテーマから乖離していきます。アニメ版でも結構テンポの揺れはあったのですが、本作はそれをさらにもったいぶって、これでもかというほどテンポをいじってベタ甘感を強調します。でも、ヒロインのベルは、ベタ甘ラブストーリーにどっぷりはまるキャラではないはず。むしろ理知的で、知識欲旺盛で、先入観抜きに、自分できちんと見たものしか信用しない科学的思考の女性であるはず。本能の命ずるまま、ズブズブと愛にはまる女ではありません。

 三つ。ラストでベルが王子の瞳を見て、野獣の瞳と同じであることを確認するシーン。アニメでは王子の青い瞳が、まさしく野獣の瞳と一致し、観ている方には「ああ、ベルは外見ではなく瞳、つまり内面で男の価値を判断する女性なんだ」ということが伝わってくるのですが、本作の野獣の瞳は、一体どうしたのでしょうか・・・? 本作の重要なテーマを表現するシーンのはずなんですが・・・。

 このシーン、好きだったんです。尻軽女なら、目の前にイケメンが現れたら「まあ、いい男」と舞い上がるでしょう。ところがベルは、王子のイケメン要素には全く興味を示さない。

 中2の授業で、パネルディスカッション(討論ゲーム)があります。毎回生徒にはいろんなテーマでバトルをしてもらっているのですが、毎回とりあげるテーマに「結婚相手はつぎのどれを第一条件とするか? ①外見 ②金 ③性格のよさ ④趣味が同じ」というのがあります。これって、美女と野獣のテーマそのものなんですね。

 四つ。アニメ版はCGを原画に使用して立体的な演出を試みた、当時としてはものすごく革新的な作品でした。あれから25年が経過し、CG技術も究極のところまで来ていながら、ディナーのシーンが、アニメ版ほどドキドキしません。一体どうしたことでしょう?

 いい所もあります。ベルを演じたエマ・ワトソン。頭蓋骨の骨格がかっちりしており、理知的な雰囲気がベルにぴったりと感じました。

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2017/04/22

映画「夜は短し歩けよ乙女」感想

 原作を紹介したのは2007年の3月。もう10年も経っているのですね。

 感動したのが、ミュージカルパート。パンツ総番長と舞台監督さんとの間で語られる愛が、実に素晴らしい。外見とか性格の良さとかじゃなくて、二人がたまたま共有する瞬間、その存在が、恋のきっかけになるという、実に説得力ある展開となっております。さらに二人の歌がうまい。さらにさらに、乙女の声をあてている花澤香菜も、プリンセスダルマの声をあてている悠木碧も、皆歌がうまい。

 ところが、主人公の声をあてているのが、去年大ヒットして時の人となったあの方なんですね。実はそんなに声がいいわけじゃない。どちらかというと、くぐもった聞き取りにくい声なので、基本的にアニメの声優には向いていないと思うのですが・・・まあ彼の起用には、賛否両論あることでしょう。

 京都大学やら古本市やら、忠実に取材してアニメの背景に使用しているので、京都で暮らしたことのある人なら、ぐっとくること間違いなし。

 アニメ絵的に衝撃だったのは、「詭弁踊り」。地を這うような低い姿勢と爬虫類のような股関節の使い方で、見るからに筋肉痛になりそうな歩き方。一度見たら忘れられません。その「詭弁踊り」を、なんと黒髪の乙女が、赤いミニのワンピースでやるのです。うわあああ・・・。

 あと、テンガロンハットかぶったカウボーイキャラが時々出てきます。このキャラ、主人公の何かの象徴なのですね。是非原作を読んで確認してください。笑えますから。

 「夜は短し」とタイトルにありますが、本作の夜は、なかなか長いです。途中でみんな風邪をひいたりして、感覚的には3~4日くらいありそうな気がします。おかげで黒髪の乙女は思う存分お酒をたしなむことができます。うらやましい限りでございます。

※ お詫びと訂正

 テンガロンハットのジョニーは、「夜は短し~」の原作には登場しません。「太陽の塔」や「四畳半神話体系」のほうに出てくるキャラ(メタファー)です。訂正してお詫び申し上げます。

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2017/04/15

BD「聖の青春」感想

 最近、将棋が静かにブームになってきている?

 原作を読んだのは1999年あたり。もう18年も前!

 そういうわけで、どんな文章だったか、ほとんど忘れている。おぼろげな記憶では、たしか主人公が健気すぎて、ぼろぼろ泣きながら読んだような気がする。

 で、映画

 主人公、あんまり健気じゃないんですけど。むしろ、気持ち悪いオタク! 自己中! 自分の趣味を他人に押しつける傲慢さが鼻につきまくる・・・。「牛丼は吉野屋!」

 さらにはあちこちに笑いをとるシーンが挟まれていて、原作ははたしてこんなに笑ったっけかなあ・・・。

 日本の誇るカメレオン俳優、松山ケンイチが肉体改造して、ネフローゼ特有のむくんだ顔と身体で怪演してるのには驚いた。

 また、同じくカメレオン俳優の染谷将太が、村山の弟子を演じている。かつては神童とうたわれたのに、奨励会に入ってからは伸び悩み、最終局では鼻血出しながら小学生に負けるという屈辱に耐える青年を、見事に演じている。松山ケンイチ君よりも、染谷君のほうに感情移入する人の方が多いのではなかろうか?

 だがそれ以上に素晴らしいのは、羽生先生を演じる東出昌大。あごに手をやる仕草とか、頭をかきむしって空中を見上げる仕草とか、羽生先生の癖を、これでもかとばかりに次々とコピーして見せてくれる。よくぞそこまで忠実に! そしてお待たせしました!勝負所で出る有名な「羽生にらみ」までもを忠実に再現! 東出君すごいよ!

 本作の名シーンは、この羽生先生と村山聖が、深夜の食堂でビールを酌み交わすところ。「この店のオヤジは、ここにこうして座っているのが、羽生さんだと知っていても、絶対に知らんぷりするんです。そういういい店なんですよ」みたいなことを村山が言うのだが、残念! オヤジは羽生先生を見るなり「羽生名人だよね? 後でサインもらえる?」というギャグをかましてくれる。ところがその後の羽生先生と村山聖の会話が、実に奥深いのだ。この二人でなければ到達できない将棋の世界。その世界に「また二人で一緒に行きましょう」・・・村山聖が生きていた価値がひしひしと実感される、そんな名シーンなのだ。

 残念なことにこの名シーン。制作者側もこれは名シーンだから、もう一度使ってやれと思ったのか、ラストでもう一度使い回される。それ、やめてくれい!

 ちなみに私は渡辺竜王のファンでして、毎日渡辺先生のブログを読んでおります(笑)。

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2017/03/26

BD「シング・ストリート」感想

  アイルランド映画。

 アイルランドで家庭環境にやさぐれていた少年が、一目惚れした女の子の関心をひくために急遽バンドを組むという、たいへん不純な動機によるストーリー展開がよい。しかも、バンドを組んだメンバー一人ひとりの家庭環境に関するドラマや、バラバラだった彼らが一つにまとまるドラマ、へたくそだった演奏がどんどんうまくなっていくための血の出るような猛特訓ドラマなんかは思い切って全て割愛し、主人公のコナーと美少女ラフィナ二人に絞り込んだ所も潔くてよい。

 未来のないアイルランドの町から、才能のある若者が都会へ脱出するという展開は、最近女の子バージョンで「ブルックリン」でも描かれたし、古くは「リトル・ダンサー」からあるパターンだ。そういった過去の名作との違いは、ずばり懐かしい1980年代の音楽にあるだろう。

 コナーの兄が持っているLPレコード「デュランデュラン」や「ホール&オーツ」「スパンダーバレエ」などの名曲が、すさんだ兄弟の心を癒やし、暗い生活にわずかな光明を見せる。それだけならまあ普通の名作で終わるところ。本作がすごいのは、コナーたちが作曲し演奏するオリジナルの楽曲が、いずれも1980年代テイストたっぷりの名曲ぞろいという点にある。とにかく驚いた。たいていこの手の、ミュージシャンを主役にした映画では、オリジナル曲はつまらないものになる事が多いのだ。過去の名曲に果敢に挑んだのはいいが、あえなく撃沈という映画はたくさん観てきた。(例えば「あやしい彼女」。   あえて過去の名曲に挑戦しなかった作品もある。「BECK」だ。)

 しかし本作は違う。メロディーラインがキャッチーで美しい曲ばかりなのだ。1980年代に、ピーター・バラカンの「ポッパーズMTV」に夢中になった世代は、まず間違いなく本作にはまるだろう。ついでに言うと歌詞も抜群に素晴らしい。主人公たちの心のうちを見事に表現しており、このあたりある意味ではミュージカル的手法なのだ。

 コナーの兄が重要な役として登場するのだが、彼の「フィル・コリンズを好きな男に惚れる女はいない」という台詞が、「ポッパーズMTV」は好きだけど「ベストヒットUSA」はあまり・・・という人にとっては、あまりに名台詞すぎて泣けることだろう。

 ラストの、二人を待ち構える未来が過酷であることを象徴しつつも、しっかり乗り越えていくだろうことを暗示する終わり方もよかった。

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2017/03/12

BD「ブルックリン」感想

 イギリス映画。

 途中まで見て、ふと思いました。このパターン、森鷗外の「舞姫」じゃね?

 男女の立場を入れ替えたら、なんだかそっくりな気がします。

 舞姫とは「ドイツに留学中、美少女エリスと恋仲になる主人公太田。しかし、身勝手な事情により、太田はエリスをドイツに残し帰国する。」という、なかなかに鬼畜なストーリーなのですが、本作は「舞姫」以上に鬼畜なストーリー展開となっており、見ていて、お口あんぐり状態となります。なにしろ二重結婚一歩手前まで行くのですから。しかも、イライラ女(雑貨屋のおばさんにつけられたあだ名)が指摘しなかったら、本当に二重結婚していたかもしれないという・・・。いやはや、イライラ女さまさまです、ああ、危なかった。おかげで、ぎりぎり人間として踏みとどまることができたヒロインでした。

 ちなみに、かように重要な役割を果たすイライラ女に向けてのヒロインのお言葉は「何がしたいんです? ジムから離れさせたい? 私を町にとどまらせたい? 自分でもわからないのね」という辛辣なもの。でもこれって、そっくりヒロインにも当てはまる所がイタイ。まさしく自分でもわからなくて迷走しまくり状態。

 本作は、「アイルランドのど田舎から、ニューヨークのブルックリンに女一人で移住し、様々な困難を乗り越え、逞しく自立していく女」というテーマで見ればいいんでしょうけど、男が女に対してさんざんやってきた非道な行い(その時の感情で女を取っ替え引っ替えする)を、男女ひっくり返してドラマにしてみました? 的な感覚がどうしても拭いきれず、いまいち感情移入できませんでした。 

 ちなみにヒロインを演じる女優さんはシアーシャ・ローナン。日本の女優さんだと、黒木華を3割ほどボリュームアップさせた感じ? おぼこい顔して、ヤルときゃヤリます。後半になるにつれ、ファッションやお化粧がどんどん垢抜けていく様子は、見ていてなかなか楽しかったです。 

 

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