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2018/03/24

映画「ちはやふる 結び」感想

 前作「下の句」から2年。

 「下の句」では千早の迷走っぷりがあまりに激しくて、見ていてイライラとフラストレーションがたまりましたが、今回は太一君が迷走します。ただし、太一君には師匠が登場し、迷える子羊太一君を新たなステージへと導いてくれます。しかも、この師匠、読み手の声が発する前の空気の震動から、次の音を予感するという特殊な才能を持っていて、カルタ永世名人として無敵の力を持っているのに、財布に現金が入ってなかったり、甘い物に目がなかったりと、絶妙なキャラ設定です。彼の存在が本作を大変魅力ある物にしています。特に太一が、無理してカルタを続けてきたことをあっさりと見抜くシーン、太一の苦悩に寄り添うシーンはぐっときます。

 同じくらい素晴らしいのが上白石萌音。新入部員の大失敗を、和歌を使って、「昔からそういうことはよくあったのよ」と慰める。いやいい子だなあぁ。特に千早から「カルタやっててよかった?」と聞かれた時の答え。ぐっときました。いやいい子だなぁ・・・。

 かるたクイーンの松岡茉優も、どS&不思議ちゃんキャラになりきっていて、特にテレビ中継シーンは楽しませてくれました。

 カルタ競技特有の戦術がいくつか出てきて、素人の私にはちんぷんかんぷんでしたが、そこは想像力で補える範囲でしたので、全然気になりません。気になったのは、2年たって、役者さんたちもそれなりに大人になったため、高校生役にはちょっと無理があるかなと感じるシーンがちらほら。でもそこは想像力でなんとか・・・(笑)。

 途中に差し挟まれる水彩画タッチのアニメが、また実に効果的。水彩画だから滲んで見えるのか、こちらの涙腺が緩んでいるから滲んで見えるのか、さてどっちだったんだろ?

 ダイナミックなカメラワーク、静と動を感じさせる音楽、だれることのない緊迫したストーリー展開、いい映画だと思いました。

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2018/03/18

塩野七生「ギリシア人の物語Ⅰ」感想

 全三巻。

 第一巻がペルシア戦役、第二巻がペロポネソス戦役、第三巻がアレクサンダー大王の東征となっているらしい。

 まずは第一巻から。

 「ローマ人の物語」を読んでいたので、正直「ギリシア人の物語」なんて、たいしたことないだろうと高をくくっていた。ハンニバル対スキピオや、カエサル対ヴェルチンジェトリクスのような、胸躍らせるドラマなんか、さすがにないだろうと。ところがこれがとんでもない思い違いだった。もうすでに、ギリシアの重装歩兵たちは、後のローマ軍のような包囲殲滅作戦を、騎兵抜きの歩兵だけで実現させ、数で優るペルシア軍に圧勝していたのだ。「マラトンの戦い」である。先勝報告をアテネに伝えるべく40キロを走り抜いた男の故事が、「マラソン」の語源になったという例のやつである。

 さらにそれに続く「サラミスの海戦」も、世界史の教科書に登場し、名前だけは知っていたものの、それが海上でどのような包囲線を展開したのか、どのようにドラマチックなものだったのかは、本書を読むまで知らなかった。

 また、映画「300」で有名になった、スパルタ兵300人がペルシア軍相手に死闘を演じ、全滅した例のエピソードも登場する。この「テルモピュライの戦い」が、対ペルシア戦において、ギリシア側に悲壮な決意をさせるための重要な伏線となっている。それが本書を読むとよくわかる。

 という風に、「ローマ人の物語」に一歩も引けを取らないドラマチックさなのだ。多分に塩野七生氏の想像による書き加えがあるのだろうが、無味乾燥な歴史の教科書を読んでいたのではちっとも伝わってこない、想像もできない、当時のギリシア人たちの熱い思いがひしひしと伝わってくる点、本書を高く評価したい。

 さあ、次はこれも世界史の教科書で、名前だけは知っている「ペロポネソス戦役」だ!

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2018/03/10

彩瀬まる「くちなし」感想

 短編集です。女性が主人公で、しかもどの女性もなんだか感情表現がねじくれています。従来からある価値観に意義を差し挟みます。例えば結婚しない女は価値がないとか、子を産まない女は価値がないとか・・・にです。おかげで異性関係がうまくいきません。そのうまくいかなさ加減を、短編ごとに手を変え品を変えてしつこく訴えてきます。ですから全部一度に読むと、げんなりしていしまいます。一つずつ読むことをお勧めします。

 SFの手法を使っていておもしろいなと思ったのは「花虫」。

 カタツムリに寄生し、カタツムリの行動を夜行性から昼行性へとコントロールし、わざと鳥に発見されやすくして鳥に捕食させ、今度は鳥に寄生する、というおそろしい寄生虫ロイコクロリディウム。本作は実在する恐怖の寄生虫を美しくアレンジし、人間に寄生させて、愛情のコントロールを行うという設定。はたして寄生虫にコントロールされた愛は、本物なのか? 偽物だとわかった上で、人はそれを拒絶できるのか? 今の幸せな毎日を捨てて、本当の感情を手に入れようと思うのか? 「愛こそすべて」という従来の価値観に、真っ向から異議を唱えた大作(笑)となっております。結構ぞわぞわしながら読みました。

 一番のお気に入りは「愛のスカート」。変人ファッションデザイナーを好きになってしまった主人公。ところが彼は、さほど美人でもない子持ちの人妻に恋をしている。傷心の主人公が彼に創作上のあるアドバイスをしたところ、大ヒット作品「愛のスカート」ができあがり、おかげで彼は一躍売れっ子デザイナーに。彼も主人公も、成就しない恋とわかりながら、それをこれからも育てていくだろうことを予感させて本作は終わります。本短編集の中では異色と言えるほどに明るい展開であるところがいいですね。報われない愛でも、「自分は彼の成功に貢献している」というささやかな自己満足が得られるのならば、こういう展開もアリではないかと思ったりします。

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2018/03/04

WOWOW「帝一の國」感想

 原作は読んでいません。予備知識なしで見ましたが、本作はマンガ原作の映画としては飛び抜けて面白いと言えるのではないでしょうか

 まず、役者がいいですね。主役の帝一を演じる菅田将暉、全力でおバカな役を演じていますが、ちっとも暑苦しくなく、むしろ爽やかです。これってすごくポイント高いと思います。なかなかこういうことが出来る役者さんは、いないと思います。

 脇を固める男子たちも、タイプが色とりどりに揃っています。特にライバル役がみな素晴らしい。女性は目移りするのではないでしょうか。学園祭で、その生徒会のそうそうたるメンバーたちが、ステージ上、皆ふんどし一丁で太鼓を叩くパフォーマンスがあります。それを見た女性がくらくらっと倒れる演出がなされていたのですが、まったく不自然さを感じさせません。それくらいに皆さんおしりが魅力的です(笑)。かように、皆主役を張れるであろう若手男性俳優を、惜しげもなく脇役で使って、しかもおしりを(これも惜しげもなく)丸出しにさせている点が、本作の最大の魅力でしょう。

 それだけでなく、菅田将暉の父親役を演じる千葉雄大の、苦み走った表情が、本作にビターな隠し味を加えています。現実にはありえないような採点シーンも、千葉雄大の演技のおかげで、ぐっと引き締まったものになっていました。

 また、構図的に「あ、これはきっと原作にあるんだろうな」と思わせるような、パースをぐっと強調したものがちょくちょくあり、いいスパイスとなっていました。

 男性キャラが皆素晴らしかったのに対し、女性キャラがやや弱かったような気もします。このあたり、原作はまだまだ続きがあるようですし、本作の評価も非常に高いことから、きっと続編が撮影されることでしょう。というわけで、今から楽しみに待っていたいと思います。

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