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2017/12/30

松永淳+田中渉「きっと嫌われてしまうのに」感想

 以前、このコンビの作品「ラブかストーリー」を紹介したのですが、相変わらず本作も、人前で持つには恥ずかしい表紙をしていて困りました(笑)。

 大どんでん返しが売りの青春小説です。

 とはいえ、途中であちこちにヒントが差し挟まれているので、結末を薄々予感しながら読むことができます。このあたりのさじ加減は絶妙! でも、読みやすい口語調の文体なので、じっくり考えもせず、先が知りたくてどんどん読んでしまい、あああそうだったのか・・・というパターンに(笑)。

 このパターンは乾くるみの名作「イニシエーション・ラブ」と似ています。

 ついでに言うと、中学生が読むにはちょっと・・・なシーンが多発するところも同じ(笑)。高校生以上におすすめします。 

 きちんと分析しながら読みたいという方は、年表を作りながら読むといいでしょう。特に震災の発生年と、パンダの来日年と、中日の山本昌投手が最多勝投手となった年。あと、ケータイが高校生に普及しだしたのが、いつごろだったか。

 タイトルの意味もラスト近くで「すとん」ときます! 泣かせます。

 世間では全く話題になっていない本作ですが、エンターテイメントとしてなかなかな小説だと思います。あとはドストエフスキーの「罪と罰」と関連する部分に、もう少し必然性があれば・・・とか、過去の大震災をこの手の作品で扱っていいのか・・・とかがクリアできていれば、文句なく第一級のエンターテイメント小説と言えるのではないでしょうか。

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2017/12/24

佐藤 究「Ank : a mirroring ape」感想

 SF小説です。

 しかも大風呂敷広げすぎの(笑)。

 きちんとした科学的な説明を求める人は、本書を手にしてはいけません。理系の人が読んだら唖然とすること間違いなし。

 科学的知識をうまく使って、読者を鮮やかに別世界へ連れて行ってくれるタイプのSFでもありません。つまり騙し方が下手。

 ネタバレになるので、ぼかして書きますが、人間のAという能力は、遺伝子Bの有無に関連がある、とおっしゃるのです。さらに人間がCという状態になっている時間と、太陽のDの時間は同じであるとも。・・・一体どこにその根拠が? 論理的な説明も証拠もなく、一体誰がこんな話を信じるのか? あんたはどこかの宗教団体か?

 元ネタとなる類人猿やDNAに関する科学的知識は、ネットで検索したり、出版物を読んだりすれば、誰でも手に入れられるものばかりです。どこかのすごい大学に入る必要はありません。むしろそれらの比較的ありふれた知識ををどう料理するか、そのアイディアのほうが、SF小説を創作する上でのキモなのですが・・・。

 そもそもミラーニューロンが働かない人間(共感能力が欠如する)も、世界には一定数以上いることがわかっているので(いわゆるサイコパス)、人類の何割かは、本書の暴動に巻き込まれない可能性があると思われます。

 さて、そういったSF部分のいい加減さには目をつぶって、サスペンス部分に注目して読んでみると、これがまた、テンポが悪いのです。例えば、半分ほど読んだところで、暴動を引き起こした犯人と、その手段が判明するのですが、そこから作者が引っ張る引っ張る(笑)。同じような展開が何度も繰り返されます。これ、後半は半分にならなかったのでしょうか? 私は読んでいて飽きました。

 

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2017/12/17

WOWOW「ぼくのおじさん」感想

 ネタバレあり。

 北杜夫の小説を映画化

 「ぼくのおじさん」というタイトルになってはいるが、北杜夫が自分のことを第三者視点で客観的にとらえつつ、あちこちに自分のぐうたらな言動についての言い訳を散りばめたもの、と考えて見ることもできる。

 真木よう子がヒロインを演じている。おじさんは真木よう子(推定35歳)に一目惚れして、彼女が経営するコーヒー農園のあるハワイまで出かけるのだ。

 残念ながら真木よう子は、私のストライクゾーンからは大きく外れているので、なぜ怠け者のおじさんが彼女を追いかけてここまで行動的になるのか、その必然性を全く感じられず困ってしまった。まあ、人の好みはそれぞれということでここは納得するしかない。

 さてそのおじさん、意外に人のよいところがあって、恋敵に勝ちを譲ったりするのだ。すると、「捨てる神有れば拾う神あり」で、甥っ子が書いた作文「ぼくのおじさん」を読んだ担任の女先生が「私、おじさんに会ってみたいな」と言うところで本作は終わる。

 で、この女先生を演じるのが戸田恵梨香(推定29歳)なのである。私としては真木よう子よりも戸田恵梨香のほうが、ストライクゾーンに近いのである。教室で生足にミニスカートというシーンもあったりして、おじさんに対するサービス精神も心得ていらっしゃるのだ(笑)。

 監督は最初から二人の女優さんをどう使うか、計算して配役しているはず。ということは、本作でおじさんをハッピーエンドにするためには、一人目の女性より、二人目の女性のほうを、若くて美人にしたほうがよいと計算するのは当然であろう。

 というわけで、女性の好みが監督と一致したのを感じることができた映画であった。

 必見とは言わないが、暇な時に、ほのぼの感を味わいたい人にはお薦めである。

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2017/12/10

Wowow「パッセンジャー」感想

 SF映画。

 宇宙船内の冬眠装置で眠っている間に、はるか彼方の新惑星に移住する、という設定。

 最初、宇宙船がゆっくりと前進する映像が流れる。宇宙船の前方部分には、シールドが張り巡らされているらしく、小惑星がぶつかっては光を放ち、消滅していく。この映像が実に美しい。宇宙船の造型も、斬新でかっこいい。

 ある時、宇宙船はシールドでは防ぎきれない巨大な小惑星と衝突する。深刻なトラブルが発生し、乗客の一人が、冬眠から目覚める。到着予定まであと90年。その間、たった一人で船内で生活しなければならなくなった彼が、孤独に耐えきれなくなり、ついに・・・という展開。なかなかに、人でなしなストーリーだ。女性の立場だったら、こんなのありえない!と叫びたくなるだろう。

 ストーリーは虫酸が走るのだが、映像はやたらと美しくかっこいい。このギャップが本作の最大の個性と言える。広大な宇宙空間で、自分一人しか存在しない、この圧倒的な孤独感は、今までのSF映画にはなかったものだと思う。無重力空間の演出の素晴らしさが、特にそれを強調する。

 中盤からは、登場人物が増え、なにやらストックホルム症候群(人質が犯人と閉鎖空間で長時間非日常的体験を共有した場合に発生する。人質が、犯人の心情や、事件を起こした理由を知って同情し、犯人に愛情を感じるようになるというやつ)っぽい展開となり、いちおうこれはこれでよい人生だったのではないですかねぇという終わり方をする。このストーリー展開、納得できる人と、納得できない人とに別れるだろう。私は納得できないほうだ。

 そういうわけで、ドラマ部分はどうでもいいのだが、映像美のほうは、大画面で何度でも見返したくなる、そんな映画である。

 劇中でアンドロイドのバーテンダーが、主人公にスコッチをいれてくれる。シーバスリーガルの18年ものだ。これがもしマッカランの18年ものだったら、主人公ももう少し、孤独を楽しめたんじゃないだろうか(笑)。

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2017/12/03

中村航「無敵の二人」感想

 ボクシング小説、しかも実話ベース

 北海道出身の元日本ライトフライ級チャンピオン畠山昌人と、彼を育てた女性トレーナー赤坂裕美子(本作では「ひかる」という名前で登場)のドラマ。

 最初は「ねえ、ムシケン! ぐるっとやって、ねえ、ぐるっと!」というひかるのセリフでスタートする。ムシケンは「ちょっ、ちょっち、ひかるちゃん!」などど声を出す。もちろん、ムシケンとは具志堅用高のことで、現在読売新聞で自伝が連載中なのである。それによると「ちょっちね」というのは、「ちょっと」という意味ではなく「そうですね」であるらしいのだが、本作では「ちょっと」の意味で使われる(笑)。

 いきなり世界チャンピオンと遊ぶ小学生の女の子のシーンで始まるのだから、驚きである。さらに本作、ひかるの小学生時代の天衣無縫ぶりがこれでもかと描かれる。ひょっとしてこれはボクシング小説ではなく、ひかるの担任教師ナカザワの教員苦闘ドラマなのか? と思ったりする。だが、読んでいる最中は「ボクシングはいつになったら始まるのか」とか、そんなことはこれっぽっちも思わず、ただただひたすら、男子軍団のリーダーで、しかも女子たちからも慕われている赤沢ひかるの人間的魅力にとりこになっていたのである。

 ちなみに小学生時代、ひかるは同級生の田川君と親友の誓いを交わす。当然これは成長してからの伏線かなにかだろうと思いつつ読むわけだが、残念ながら田川君はこれっきり二度と出てこない(笑)。同じく中学生になったひかるは、男友だちのイケダくんから「おれたち、付き合おうぜ」と告白され「あー、うん」とOKし、しばらく付き合うのだが、このイケダくんもこれっきり二度と出てこない・・・。この潔さ(笑)。いやあまさしく実話ベースだなあ。赤坂ひかるがどんな子どもだったかを語るための一登場人物としての扱い(笑)。

 (さらについでに本作、ひかるたちはガンプラに夢中になったりする。ザク、旧ザク、グフ、ズゴック、ドム、ゲルググ、ジオング・・・)

 この少女が、25歳になった時、父親の入院を機にボクシングジムを継いで、トレーナーの道を歩むのだ。

 もう一人の主人公畠山が登場するのは138ページになってから。ここから本作は本格的なボクシング小説になっていく。しかもこの畠山のボクシングスタイルが、とてつもなくストイックでかっこいい。試合前に右の拳でとんとんと左胸を叩く。試合が始まると愚直なまでに前進し、内側からコンパクトに連打する。やがて試合後半になり、持久力に勝る畠山が、ついに相手を一方的に連打する時間がやってくる。畠山の「絶対時間」・・・。正直しびれた。途中審判のミスジャッジによる不運にも見舞われるが、そこからの再起シーンが、またとてつもなくかっこいい。

 ボクシングファンのみならず、やんちゃでわんぱくな少年少女時代の話が大好きな方は、本作は必読であると言えよう。

 

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2017/12/02

BD「Perfume Clips2」から「If you wanna」感想

 さすがBD。細やかさはもちろんのこと、色の濃密さが全然違います。驚きました。

 嬉しかったのはPRODUCTION NOTEに「Sweet Refrain」撮影で使用した美術館の見取り図がついていたこと。2013年11月に私が書いた見取り図とほぼ一致していました。やったー(笑)。

 さて、「if you wanna」のPVです。撮影資料プランのthe storyを読むと、「試練の象徴である飛行機、車、船が近づいてきて、三人それぞれが対峙し、毅然と立ち向かう。最終的に試練はピクセル単位に分解されていく。」とあります。

 え? そういうストーリーなの? 

 てっきり私は、3人がそれぞれ飛行機事故、自動車事故、海難事故に遭遇し、植物人間状態となって眠っている設定かと・・・。あるいは遺体の遺伝子からコピーを作ったはいいけど、何かが不足していて、眠ったままの状態であるとか・・・

 3人が眠っている部屋の壁には、「Spending all my time」の時と同じように「02」という番号が表示されていたので、「Eva」を連想した人も多かったのではないでしょうか? そうか3人は綾波レイと同じく人造人間なのか・・・みたいに。

 黒い逆三角錐から、エネルギーが照射されるカットが、たびたび挿入されます。このエネルギーによって、眠っていた3人は目を覚まし、再び活動を始める。しかし、ラスト近くで何らかの問題が発生し、三角錐は暴走、あるいは爆発する。エネルギーの供給源を失った3人は活動停止状態に・・・というバッドエンディングなのかなと。(バッドエンディングと言えば、今回の「Perfume Clips2」最初のPV「Spring of Life」もそうでしたね。)

 というわけで、予想は大ハズレでした(笑)。

 皆さんはあのPV、どのような解釈をされましたか?

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