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2017/05/28

佐伯和人「月はぼくらの宇宙港」感想

 平成29年度読書感想文コンクール課題図書中学校の部、ノンフィクション分野です。

 表紙の絵が、なんとも昭和っぽいし、対象が小学生っぽい。作者は気に入っているようですが、今時の中学生は、この表紙ではおそらく手にしないでしょう。同じ作者の「世界はなぜ月をめざすのか」のほうがよっぽどマシです。

 ミニ実験コーナーというのが8つあり、「月面の足跡をつくってみよう」「レイ(クレーター周辺にできる白い筋)をつくってみよう」などを紹介してくれます。地球上で簡単に実験できるよう、工夫されているとは思いますが、困ったのはこれらのコーナーの写真に実験者として出てくる子供が、筆者の実の娘だというところ。全国に自分の子供の顔をさらしていますが、いいんでしょうか? 子供の今後の身の安全とか、ちゃんと考えた? 将来お年頃になった娘が、このことを後で恨みに思ったりする可能性とかも、考えた?

 さてこの本、コスパについての説明がなかなか楽しいです。ロケットで1キログラムの重さの物体を打ち上げるのにかかる金額が1億円! 金1キログラム500万円と比較して、いかにお金がかかりすぎるかを教えてくれます。当然宇宙から物質を持って帰るのにも1億円かかるわけです。つまり、月に貴重な資源があったとしても、それを地球に持って帰って利用するには、お金がかかりすぎて現実的ではない。

 どうやら、宇宙に関わる仕事は儲かりそうにありません。この本を普通に読んで、「宇宙開発の仕事をしたい」と思う中学生は少ないのではないでしょうか。

 だったらなぜ今、世界の各国は月を目指すのか。それは月の資源を使って月面基地を作るためのようです。月で手に入る資源があれば、いちいち高い金を払って材料を月面まで送らなくてもすむというわけです。

 この本は子供向けなので、説明はこのあたりで終わっています。なぜ中国が真剣に月面基地建設の計画を進めているのか? その理由については、政治的問題もあり、触れてはいません。

 さて、読書感想文を書くなら、その年に起こった印象的な出来事と絡めて書くのはお約束。当然ここは、北朝鮮のミサイル開発と絡めるべきでしょう。

 おそらく中国が月面に基地を作りたい理由は、月から地球を偵察するためでしょう。本書にも、人工衛星では地表に近すぎて、地球のごく一部しか見ることができないなどと、ヒントが書いてあります。さらに、月からなら、地球全体を見ることができるというヒントも書いてありますし、ちゃんとその証拠写真も載せてあります。勘の良い中学生なら、「あ、中国は軍事偵察衛星よりもずっと性能の良い、月面軍事偵察基地の建設を目指しているのか」と気付くでしょう。 

 月からなら、北朝鮮のミサイル発射準備も、リアルタイムに観察できます(月が裏側にいる時は不可能ですが)。アメリカ合衆国の空母も、どこにいるか一発でわかります(今回の北朝鮮ミサイル実験に対する牽制として出航したアメリカ空母ですが、現在の中国の索敵能力では、位置の特定は不可能のようです)。今の戦争は、先に情報を手に入れた方が勝ちですので、月面基地を完成させれば、中国はアメリカなど諸外国に対して圧倒的優位に立てるでしょう。また、月面基地が完成すれば、そこで軍事用人工衛星を量産し、地球の静止軌道上に大量に送り込むという可能性も十分考えられます。

 さあ、全国の中学生諸君、どんな感想文が書けそうでしょうか(笑)?

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2017/05/21

DVD「エブリバディ・ウォンツ・サム」感想

 アメリカ映画。

 以前、「シング・ストリート」を紹介した時に、

 1980年代に、ピーター・バラカンの「ポッパーズMTV」に夢中になった世代は、まず間違いなく本作にはまるだろう。

と書いたのだが、本作は同じ1980年代でも、舞台がアメリカだから、当然、小林克也の「ベスト・ヒットUSA」に夢中になった世代にお薦めしたい。

 オープニングでザ・ナックの「マイ・シャローナ」が流れてきて、主人公たちが典型的なアメ車に乗り、女の子たちをナンパするシーンを見ただけで、この映画がいかにくだらないことを真剣に映像化しているかが伝わってくる。

 主人公たちは野球の名門大学に特待生として入学し、あと3日で授業がスタートする、そのわずか3日間を時系列に沿って描くという、ヒネりも何もない展開。しかも、野球部なのに、映画が始まってから1時間10分以上たって、やっと練習シーンがあったりする。熱血スポ根ものでは全くないのだ。じゃあ、それまで彼らが何をやっているかというと、ひたすら酒を飲んで、ロック(ヴァン・ヘイレンなどの名曲が次々にかかります!)を聴いて、バーでケンカして、女の子に声をかけて、部屋に連れ込んで・・・というような、青春の無駄遣いを延々と見せてくれる。

 じゃあ本作は観るに値しないかというと、そんなことはない。どうでもいいようなくだらないエピソードの積み重ねが、じわじわと後半になるにつれ効いてくる。まるでボクシングの地味なボディー攻撃のように。

そしてラスト、主人公が初めての大学の講義に出席する時、今まで馬鹿騒ぎばっかりやってきた先輩たちが、突然まともなアドバイスをくれるのだ。このアドバイスを聞いた時に、ああ、これが大人になるっていうことなのかと、しみじみさせられる。

 学生時代にバカばっかやりながら、それでも少しずつ自分が大人になっていく寂しさを、意識の片隅で感じていた、そんな記憶が蘇る。なんとも言えない、鼻の奥がつーんするような懐かしさが、本作にはあるのだ。

 注! 基本的に大人が観る映画です。子供が観ても、ちっとも懐かしさなんか感じないでしょうし、そもそも本作、教育上よろしくないシーンのオンパレードですから(笑)。

 

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2017/05/15

「METROCK2017」大阪2日目 レキシとPerfumeのイナホに感動!

 METROCK2017大阪2日目に行ってきた。狙いはもちろん大トリを勤めるPerfume。

 高松からだと高速道路を使って2時間半というほどよい距離に、メトロックの会場はある。

 会場に入ると30人に一人くらいの割合で稲穂を持っている人がいる。お米関係のイベントか何かで配布されたのだろうか? 稲穂と言えば、PerfumeのPTAコーナーで、あ~ちゃんが観客に強制的にやらせる「イナホ! イナホ!」が思いだされる。もしかしたら今日のPTAでもやるかも知れない。そしたらあの稲穂使えるよなあ。欲しいなあ。どこでもらえるんだろ? みたいなことを、その時の私は漠然と考えていたのだった。これが後の強烈な伏線になるとは、その時は知る由もなかった。

 さて、フェスなのだから、あらかじめタイムテーブルを見て、お目当てのアーティストを決めておくのが大事。事前にYou tubeで出演者たちの主なPVに一通り目を通して、選んだのが「夜の本気ダンス」「THE ORAL CIGARETTES」「雨のパレード」の三組。実際に聞いて観てみてよかったと思ったのは「夜の本気ダンス」 曲もいいのだが、ドラマーの兄ちゃんの、関西弁バリバリのMCが最高に面白い。「フェスの責任者に言いたいことあるんや。『夜の本気ダンス』やのになんで昼間なん?  なんで晴れとんのに『雨のパレード』なん? なんで大阪やのに『関ジャニ』呼ばへんの?」・・・大笑い! この兄ちゃん、外見がなんとなく映画に出てくるチャイニーズマフィアっぽいのだが、 本人も自覚しているらしく、MCで自虐ネタとしてそれに触れる。で、このグループが面白いのは、ヴォーカルの兄ちゃんの外見が、しゅっとしててスタイリッシュで、ドラマーの兄ちゃんと実に好対照な所! 関西のバンドはやっぱり楽しい。

 お目当てのバンド以外の時間は、ひたすらテント下のベンチで読書。夜に備えてじっと体力温存。時折風に乗って「Cocco」の歌声やら、「ブルエン」のシャウトやらが聞こえてくる。

 太陽もやや傾き始め、時刻は16:50。あと20分でメインステージ「レキシ」のライブが始まる。お目当てのPerfumeで最前列をゲットするためには、その一つ前の「レキシ」のライブの時点でよいポジションを確保することが肝要である。幸い「BEGIN」に客が吸い寄せられている時間帯で、最前列は割と人口密度が薄く、理想的なポジションの確保に成功した。

 その時、私は得体の知れない違和感に捉えられた。あわてて周囲を確認する。すると、私の右の人も、左の人も、前の人も、後ろの人も、ざっくり数えて10人のうち9人くらいの人が、手に手に稲穂を持っている。そう、あの稲穂だ。それが潮風に吹かれて、一斉にゆらゆら揺れる異様な光景・・・。この時初めて私はある考えに至った。これってレキシのライブ専用グッズ? 予感は当たった。ライブ中盤の「狩りから稲作へ」という曲で、客が皆稲穂を振りながら「イナホ」コールをするのだ。なんか宗教みたい・・・。レキシさんもバックバンドに「ちょっとこれ、曲なしでやってもらっていい? みんなイナホ振ってみて・・・怪しい! みんな怪しいぞ。何かの宗教みたいだ」と自虐MC! さらに、ビニール袋かぶったままの稲穂を振る客に向かって「ビニール袋外しなさい。それ大事か? とても大事な キミの稲穂は・・・って歌っちゃうぞ。歌わせたいのか? ♪とても大事な キミのイナホは ムダになります♪ だから外しなさいビニール袋!」というとんでもないMCが炸裂! 「これ絶対Perfumeさんに怒られる。許可とってないし。アミューズさんに目つけられて仕事干される。そしたら二度とライブできなくなる。だから今日のライブが最後のライブ。みんなしっかり目に焼き付けて」と言いつつも、再度「♪とても大事な キミのイナホは ムダになります 世界は回る♪ 繰り返すこのイネリズム イネリズムイネリズムイネリズムリズムリズムリズム・・・」歌い出す。バックバンドもしっかり即興で「ポリリズム」の演奏つけて大盛り上がり。こんなに楽しいライブになるとは全くの想定外!!

 その後レキシファンの方々といっしょに「イナホ! イナホ!」「ネング! ネング!」「ジョーモンドキー! ヤヨイドキー! ドッチガスキー?」いや~楽しかった。

 レキシさんのライブも18:00には終わり、Perfume姉さんたちの出番である19:00までは、ひたすら今のポジションを死守しつつ待機する。この待ち時間の間に読んだのが、昨日感想をアップした森絵都の「みかづき」だったりする(笑)。 

 いよいよ19:00。下手から3人娘登場! で、ここまでの話の流れから想像できると思うが、ついにその時が来たのである。PTAコーナーの「イナホ」コール! あ~ちゃんが「あれ~、稲穂持っとる人がようけおるね。」と客をいじる。さらには「とても大事な キミのイナホは ゆうてイネリズムうとうてくれたんじゃろ。ありがとね。ほんまレキシさん ええ人じゃけえ。ああいう人がフェスの大トリやったらええ思うんじゃけど。」と心温まるMC。

 結論! METROCK2017大阪2日目、レキシさんとPerfumeさん、二つ続けて観た人は超ラッキーだったのではなかろうか? お二方のMCの相乗効果で、楽しさ三倍増くらいに感じられたのだ。

 

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森絵都「みかづき」感想

 塾の黎明期である昭和36年から現在にいたるまでの、塾経営者親子三代にわたる物語。ページ数は466Pもあるが、なにせ三世代の物語だから、ストーリー展開は結構ぽんぽんと進む。気の強い女房に主導権を握られた主人公が、どうやって自分を取り戻すか? というドラマでもあるし、女系家族の親子三世代、女三姉妹の成長と確執と和解のドラマでもあるし、塾が日本社会で求められてきた役割の変遷を描いたドラマでもあるし、かなりてんこ盛りな印象。

 キャラ設定として笑えるのは、主人公の吾郎だろう。生徒個々の能力に応じた教材を用意し、できた! 解けた! という体験を何度もさせることで、自分で問題解決する姿勢を身につけさせるという、まさに今公教育が目指している「生きる力」の育成を、昭和36年に既にやっていたという先見性でまず持ち上げておいて、女癖の悪さで地に堕とす!

 塾の共同経営者として、ドSの女を登場させ、吾郎と対面させるのだが、なぜか吾郎は、それほどタイプじゃない彼女と結婚し、二人も子供を作ってしまう。それでいながら、攻撃的な性格の女房との毎日に息詰まった吾郎は、自分を癒やしてくれる心優しい古本屋の女に浮気する! という、なかなか笑える展開なのだ。

 嫌なタイプの女なのに、なんで結婚しちゃうかなあ・・・。しかも子供二人も作っちゃって・・・。

 この優柔不断さが、孫の一郎にもしっかり受け継がれているところが、また面白い。女性作家だからこそ、こんな設定の小説が書けたのではないだろうか? 男だったら、絶対こんな、男の立場が根本から揺らぐような書き方はしないと思う。 

 文部科学省が「ゆとり教育」に、実は何を求めていたのか? のあたりは、事実だとしたらずいぶんひどい話ではあるのですが、実際のところ、どうなんでしょう?

 個人的には、大学時代に綴り方教室を少々かじって教員になったので、最後のほうでそれが出てきた時には、正直うれしかったですね。

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2017/05/07

WOWOW「孤独のススメ」感想

 オランダ映画。

 ロッテルダム国際映画祭観客賞、モスクワ国際映画祭観客賞などヨーロッパでは数々の賞を受賞した作品。

 最初からちゃんと伏線は張ってあったのだが・・・、まったく気がつかなかった。まさかラストでああくるとは・・・。あまりの意外な展開に、お口アングリ状態がしばらく続いたくらいだ。

 中盤でも、主人公がある場所に一人で出かけていくシーンがちゃんとあるのだから、いいかげんここで気がついてもよさそうなものだが、やっぱりここでも気がつかず・・・。ああ、自分が情けない(笑)。

 そもそも邦題が「孤独のススメ」とあるから、定年迎えたおっさんが、会社人間から卒業して、自分の趣味に没頭し、「孤独もいいじゃん」とかつぶやく展開かと思って見始めたのだが・・・日本にも「孤独のグルメ」という有名な漫画があるし・・・。

 ぜんっぜん、孤独じゃないじゃん。

 原題が「マッターホルン」であると知ったのは、映画を見終わってから。いや、このタイトルなら納得である。邦題考えた人、誰? わざと「孤独のグルメ」方面へ客を引っ張ろうとしてるでしょ? これ、絶対確信犯でしょ?

 ネタバレになると、まったく面白くないであろうから、一言だけ。本作は束縛から解放される映画なのだ。ラストの感動は保証する。いろんなモノに縛られてもがき苦しんでいる人、本作は必見である。

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