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2017/04/01

渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」感想

 小説すばる新人賞受賞作家さんの新作。

 七つの短編集。

 基本的にメンヘラ女が主人公のものが多い。さすがにそればっかり七つも続くと読む方もつらくなると考えたのか、間にメンヘラ男の短編をいくつか挟むことで、うまくバランスを取っている(笑)。

 4作目の「彼女の中の絵」なんかは、一芸に秀でた物同士が出会い、お互いが自分の不得手な部分を補い合い、あらたなプロジェクトをスタートさせる瞬間に立ち会ったような読後感で、なかなか私好みの短編である。なぜこの手の話が私好みかというと、「中田ヤスタカ」と「MIKIKO先生」と「Perfume」も同じパターンで成功してきたからである(笑)。

 しかし本書の圧巻はなんといっても最後の二編であろう。「サメの話」と「水槽を出たサメ」である。この二編は連作短編となっており、「サメの話」のほうはメンヘラ女が主人公。「水槽を~」のほうは、サメが主人公である。

 どこがいいかというと、主人公の女が、サメの目を通して自分を客観視するようになるところがいいのだ。一方サメはサメで、自分が生まれた意味について考え、そしてラストで解答にたどり着く。その解答が実にいい。

 鷲田清一も評論文に書いていたが、人間は基本的には「誰からも必要とされていない」存在なのだ。早くそれに気付いたほうが「誰かに必要とされたい」という欲求から自由になり、その後の人生が楽になる。そして、それを知った上で、本作の解答にたどり着けるのだ!

 「あなたにしかできないことはなんですか」という問いに苦しんでいる全国の若者たちに、是非本作を読んでほしい。

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