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2017/02/04

今村夏子「あひる」感想

 第155回芥川賞候補作。ただし、賞は「コンビニ人間」にさらわれた。

 帯の惹句に「読み始めると心がざわつく。何気ない日常のふわりとした安堵感にふとさしこむ影」とある。

 あらすじを書く。

 主人公の庭で飼っているあひるを見に、近所の子供達が集まるようになる。おかげで寂しかった家は明るくなる。やがて、あひるは病死するが、かわりに結婚して実家を出ていた弟が、赤ん坊が産まれるからと言って戻ってくる。あひる小屋を取り壊し、増築するシーンでこの話は終わる。

 普通なら 家族仲良くいっしょに暮らせて、父母には孫もできて、めでたしめでたし・・・となるところ。ほっこりとした家族愛がテーマの小説・・・。

 違うのだ。心がざわつくのだ。理由はたくさんある。

 ひとつ。 父も母も、目先のことしか考えない人として描かれている。あひるの件もまさにそう。近所の子供達を家にひきつけるために、その場しのぎの手段を使う。子供にはそれがばれていて、しかも子供はそういう弱みを逆手にとって利用しているのだが、父母は、そこから目をそらしている。現実を直視しないのだ。

 ふたつ。 そんな父母に育てられた主人公(姉)も、いつまでたっても資格試験に合格できない。勉強に身が入らない理由をくどくどと並べ立てて自分を正当化する。親そっくりなのである。

 みっつ。 弟は暴力的な人間で、姉は、かつてしばしば弟に殴られていた。困ったら力で解決しようとする、そんな弟の性格は今も変わっていない。 

 こんな自立していない家族に、はたして幸せはやってくるのだろうか? ひたすら不幸の予感ばかりがして、心がざわつく、そんな小説である。

 実質58ページしかなく、しかも1ページ14行、1行34文字しかない。あっとうまに読める。だから繰り返し読んで、この家族の不健全さを感じ取ってほしい。

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