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2016/12/04

DVD「ひそひそ星」感想

 途中から見始めた妻が「なんでみんなひそひそ声で話してんの?」と問うてきました。「だってタイトルが『ひそひそ星』なんだから」「あ、なるほどそうなんだ」

 人類は滅びかけており、生き残った僅かな人々は宇宙のあちこちの惑星でほそぼそと生きながらえている。ヒロインはその人々のもとへ、思い出のつまった荷物を宅配するアンドロイド・・・という設定の映画。冒頭白黒の画面で始まるのですが、いきなり最初の映像にぶっ飛びます。蛇口をひねって水を出し、急須を洗い、ガスコンロにマッチで火をつけ、沸騰するとピーと鳴るケトルを載せる。茶筒からお茶っ葉を急須に入れる昭和チックな外観の女性鈴木洋子。カメラはパンして窓の外を写すと、そこは宇宙空間・・・というなんともシュールな(笑)。宇宙船の外観も、昭和チックな長屋に、神社仏閣のパーツを取り付けたようなものにロケットノズルを二つつけたみたいな。

 宇宙船をコントロールするコンピュータが、「2001年宇宙の旅」のハルとは違い随分と幼稚なミスを犯したりして笑えます。

 鈴木洋子が降り立つ惑星が、ほとんど無人のような、廃墟のようなゴーストタウン。ほんとに人が住んでるのかと思わせておいて、監督はいきなり映像をカラーにしたりします。

 テレポート技術が確立されていて、どこへでも瞬時に物体を異動できるのに、なぜか人類は、大切な思い出の品を、何年かかろうと、宅配で届けてもらうことを希望する。

 最後の惑星では30デシベル以上の音をたてると犯罪行為とみなされる、そんな惑星に鈴木洋子は品物を届けにいきます。

 思い出の品物に触れることで一定の記憶が蘇る。そんな品物があるということは、その品物は既に、その人のアイデンティティでもある。

 そしてアンドロイドである鈴木洋子は、ラストで、ひじょうに人間的な行動を取り、映画は静かに終わります。アルミの空き缶が、こんなにも意味のある小道具であった作品は、いまだかつてなかったと思います。

 一度観たら二度と忘れられない、強烈な印象の残る映画でした。

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