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2016/10/23

朱川湊人「主夫のトモロー」感想

 「しゅかわみなと」と読みます。直木賞作家さんの新作です。

 勤めている出版社が倒産して、無職になった主人公のトモローが、結婚して妻を支えるための主夫(主婦ではない)となるお話です。

 しかも、どうやらこれは作者の実体験をベースにしているらしいので、半分ノンフィクションみたいなもんです。イクメンという流行語が出てから随分になりますが、いざ実行すると、世間はこんなにも無理解で、こんなにも困難が待ち構えているのか! というのがリアルに感じられる作品となっています。特に公園デビューなんか、主夫にとっては大難関だと思います。今後主夫を目指す人にとって、本作はバイブル、指南書となるでしょう。子供を寝かしつける必技とか、ママ友との距離の取り方とか、そこそこ実用書っぽい部分もありますから。

 例えば、妻がインテリアデザイナーになる夢を、子育てのためにあきらめるかどうか、悩むシーンがあります。そこでトモローはこう言うのです。

「子供のために夢を捨てたなんて、子供の方にすれば迷惑な話だろ」「ママはインテリアデザイナーとして独り立ちしたかったんだけど、チーコが生まれたから、全部あきらめたの」「チーコにしてみれば、じゃあ自分は生まれない方がよかったのか・・・という話になってしまう。子供の心に、そんなムダな圧力をかける親など、百害あって一利なしだ。」

 本書の主人公たちは一貫して、上記のように子供の立場に立って考えるというスタンスで子育てをします。中盤で、子供同士のケンカに親がしゃしゃり出てきて、子供が社会性を育てる芽を親が摘んでしまいそうになった時も、同様のスタンス。離婚についても後半で出てくるのですが、その時も同様のスタンス。子育ての最終目的は、子供の親からの自立にある! と私は考えているので、本書のスタンスには大賛成です。

 文体はこの作者らしく軽いもので、さらに作者の実体験がベースとなっている以上、ハッピーエンドになることはほぼ予測がつくので、安心してすいすい読める一冊でした。

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