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2016/10/09

DVD「リップヴァンウインクルの花嫁」感想

 岩井俊二監督の最新作。

 タイトルの元となった「リップヴァンウインクル」は未読。調べてみると、浦島太郎とよく似た話らしいです。異世界で遊んでいた主人公が、もとの世界に戻ると20年経っていたという・・・。浦島太郎と違うのは、ガミガミうるさかった女房が20年の間に亡くなっていて、主人公は心安らかな余生を送ることができたという点。

 本作での花嫁役は黒木華。タイトルは、異世界に行っていた彼女が、もとの世界に戻り、心安らかな人生を送るという展開を暗示しています。

 映画は全部で3時間あります。岩井俊二監督ですから、感情的なシーンはとことん引っ張ります。特に黒木華が前半で現実社会から手痛い仕打ちを食らい、自分を見失うシーンは、これでもかというくらいしつこく! 「リリイ・シュシュ」も痛かったけど、本作も負けず劣らずイタイ。岩井俊二監督特有の、残酷で不条理な痛さです。

 でも安心してください。1時間過ぎたあたりから、黒木華は別世界に誘われます。そこからの展開は、岩井俊二監督特有の癒やし系となりますので。

 特に女性二人の歌唱シーンが素晴らしい。ある仕事を終えた後、黒木華はCocco(沖縄出身のオルタナ系シンガーソングライター)演じる女性とカラオケに行きます。カラオケといっても生ピアノをバックに歌うという贅沢なところ。そこで黒木華が歌うのは、名曲、森田童子の「ぼくたちの失敗」! その中の「ぼくがひとりになった 部屋にきみの好きな チャーリーパーカー 見つけたよ ぼくを忘れたかな」という部分。この歌詞は後の伏線となっているので心にとめておいてください。つでに言うなら、黒木華ファンはこのシーン必聴です。震えるように心細さを歌う儚げな声質の素晴らしさときたら! 

 そして、その後、Coccoが返歌として荒井由実の「何もなかったように」を歌うのですが、これも必聴。「人は 失くしたものを 胸に美しく刻めるから いつもいつも 何もなかったように 明日を迎える」の部分を歌うのですが、これもラストの伏線となっているのですね。

 このシーン以外では、主にクラシックの有名どころばかり(ショパンとかバッハとかラフマニノフとか・・・)を、ピアノで叙情たっぷりに演奏するパターンばかりで、誰もが「ああ、この曲、どこかで聴いたことあるなあ」と感じることでしょう。食傷気味に感じる人は早送りしてもOKです(笑)。でも、黒木華とCoccoのカラオケシーンだけは、別! 何度でもリピートして聴きたくなります。

 ラスト30分。Coccoの母親役としてりりぃが登場します。この映画、なぜかプロ歌手を二人もキャスティングしてます。で、当然彼女も歌うのかと思ったら、さすがにそれはありませんでした(笑)。かわりにとんでもない演技を見せてくれます。やり場のない感情を爆発させたかのような・・・。そしてそれに触発されたのか、綾野剛までもがとんでもない演技を! つられて黒木華もそうなるのかと期待しましたが、さすがにそれはありませんでした(笑)。とにかくテンション高すぎのこのシーンのおかげで、それまでひたすら胡散臭い存在にしか見えなかった綾野剛(だって、前半のあの事件、この人が仕組んだことだし)が、相変わらず胡散臭いんだけど、憎めなくなるのです。

 ラストで、現実世界に戻った黒木華が薬指をなでるシーンがあります。タイトルの意味をもう一度思いださせてくれた上で、本作はエンドロールを迎えるのです。

 黒木華のやたらと可憐なメイド服姿やらウェディングドレス姿やら、あちこちに散りばめられたガンダムネタやらも含めて、かなりの名作だと思います。

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