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2016/10/02

奥田亜希子「透明人間は204号室の夢を見る」感想

 2013年すばる文学賞受賞という経歴を持つ奥田亜希子氏の2015年の作

 正直受賞作も読んでないし、どうなんだろうと思いながら読んだのですが、なかなか楽しめる内容でした。

 小さな新人賞をとったはいいけど、その後泣かず飛ばすの作家さんはたくさんいらっしゃると思います。本作のヒロインもその一人。つまり奥田亜希子氏の分身と考えてよかろうかと。さらにヒロインの設定が、空気読めないアスペルガーのようで、高校まで友人が一人もできず、本を読むことで孤独の時間をやり過ごしていたという・・・。

 「では好きな者同士でグループを作ってください」という教師の声を恐怖に感じるタイプの生徒がいるというのは、以前何かの記事で読んで知っていましたし、実際授業をしていて、うかつにこのセリフは使ってはならないなと感じることも多々ありました。が、まさか本書のヒロインもそうだとは。

 多分作者もそうだったのでしょう。というわけで本作、コミュニケーションに難のある人が、自分で自分のどこが駄目なのかを指摘しまくる、あらたなパターンの自虐小説となっております

 そんなヒロインにも友人ができるのです。そのきっかけとなる事件が、小説の出版について。友人が書いた小説を「出版してみませんか」と声をかけてきた出版社があり、それに対するアドバイスがなかなか素晴らしいのです。「出版社の人と会う約束は、とりあえずキャンセルしたほうがいい」「自費出版関係のトラブルを扱っているURLを貼り付け」「その出版社の評判はよく調べたほうがいい」

 なるほど、小説家として食べていくというのは、こういうことなのか。あちこちに実に勉強になる描写があり、今後小説家としてデビューしようとしている女子は必読の一冊ではないかと感じました。

 売れる本を書こうとあがくのではなく、書きたいという思いが身体の内側から自然とわき上がってきて、それを書き留めていく。それらを積み重ねてできた作品こそが、本当の小説だというあたりも、おおいに納得。作為的な小説って、その作為が鼻についた瞬間、読む気がしなくなりますから。

 長いスランプから抜け出すヒロインの姿は、おそらく作者自身でしょう。今年になってから新作2冊ほど出てるみたいだし。いやよかったよかった。

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