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2016/08/07

ケン・リュウ「蒲公英王朝記 巻ノ二」感想

 「項羽と劉邦」をファンタジー風にリライトした小説の第二弾を読みました。

 怒濤の進行です。司馬遼太郎の「項羽と劉邦」は文庫本で上中下と三巻あるのですが、そのうちの二巻と三巻の内容を一気に進めた感じです。

 まだかまだかと心待ちにしていた韓信将軍も、もちろん出てきます。その結果「韓信の股くぐり」「国士無双」「半渡に乗じる」「背水の陣」「四面楚歌」といった有名な故事成語のエピソードも次々に。中国では韓信将軍は、主人である劉邦に反旗を翻した人物として、まったく人気がないらしいのですが、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」で韓信を知った私なんかは、項羽と劉邦に並ぶ主人公として、おおいに支持したい人物なのですね。だから本書のように韓信将軍を重要キャラクターとして扱ってくれると、とってもうれしい。

 虞美人も出てきます。ということは当然「力は山を抜き、気は世を覆う 時に利あらずして騅逝かず 騅逝かざるを如何せん 虞や虞や汝を如何せん」という、高校の教科書で習う有名な歌のシーンも登場。

 「項羽と劉邦」とは違って、ファンタジーらしく神々の諍いが描かれています。神々にはそれぞれ後押しする人物がいて、神の代理として地上で戦わせているのです。ただ、時々神は人に姿を変えて、闘いのヒントを自分が後押しする人物に教えたりするのですね。なんとアンフェアな(笑)!

 ファンタジーらしく、空飛ぶ飛行船やら海を潜る潜水艇やら、スチームパンクっぽい機械が次々に出てきて、戦場は立体化します。飛行船は天然メタンガスさえ手に入れば、まあなんとかなるとしても、さすがに潜水艇は無理だろ! などと突っ込みたくなります。

 司馬遼太郎の「項羽と劉邦」との最大の違いは、女性の活躍度でしょう。歴史上では劉邦の妻(呂后)は、漢帝国で皇后となった後、自分の血族以外を次々と粛正して自身の地位の安泰をはかるのですが、本作では劉邦(本書ではクニ・ガル)の縁の下の力持ちとして、また、男に隷属する女ではなく、独立した1個の人格を持った人物として描かれます。

 それは虞美人も同様。ただのか弱げな女ではありません。言うべきことをちゃんと項羽(本書ではマタ・ジンドゥ)に言うのです。それ以外にも、劉邦の苦境を救うためにいろんな女性が活躍するシーンが沢山あります。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、とある人物が女性として登場し、大活躍したりします。これにはびっくり。もし本作が映像化された時には、ここはすごく重要なシーンになりそうな気がします。

 後書きによると、まだ続編があるそうなのですが、史実では先ほど述べた通り、この後は呂后による血なまぐさい圧政が始まるので、あんまり読みたくはないなあ。韓信死んじゃうし。

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