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2016/07/23

BD「エベレスト」感想

 熱い夏の夜にぴったりの、極寒の映画

 30年くらい前に、ネパールのポカラ空港からプロペラ機に乗って、エベレスト上空を遊覧飛行したことがあります。滑走路の横のテラスで飲んだ紅茶が、とにかく美味しかった。高度の関係(沸点が低い)なのか、茶葉が違うのか、以後あれ以上の紅茶を飲んだことがありません。

 本作で、主人公がやたらと紅茶を飲むシーンがあり、そのことを思いだしました。

 「金さえ払えば、8000mの高地に適性のないアマチュア登山家でもエベレストに登れる」という、とんでもない商売が成立している事にまず驚きました。その額65000ドル。高級外車一台分の金額を高いとみるか、安いとみるか。ただ、酸素ボンベや重量のある資材は、すべてスタッフがあらかじめ運搬。難所にはスタッフがあらかじめロープやはしごを設置済み! という、至れり尽くせり状態。おかげで商売繁盛らしく、なんと同じ日に何十人もの素人さんがエベレスト登頂にチャレンジ。そりゃ、難所で渋滞も起きますから、時間通りに登頂できなくなるのも当然。おまけに「無酸素登頂させろ」だの「引き返すんだ」「やだ」だの、わがままなお客さんも多く、さらにベテランシェルパが怪我したり、用意しておいた酸素ボンベが使えなかったり。この大規模遭難事故の原因の大半は、無謀な計画を強行したための人災と言えそうです。

 映像としては、ベースキャンプに着くまでの、現地の町の様子がよかった。3000メートルの高地で、酸素が薄く、ぜいぜい喘いで登る登山客の横を、きゃあきゃあ叫びながら走り抜ける現地の子供達の演出。「たかが3000メートルに適応できない者がエベレスト登頂? できるわけないだろ」的な暗示を感じるわけです。

 渓谷にかかる吊り橋の美しさも特筆もの。無事下山できた時に、この橋を再び見るシーンがあるのですが、「ああ、人の住む世界へ戻ってきたんだなあ」とつくづく実感できます。

 納得できない映像もあります。例えば凍傷にかかった顔や手の映像。たとえて言えば、マイナス25度の冷凍庫でカチンコチンに凍った牛肉と同じ状態ではないかと思うのですが、本作では随分と柔らかそうな鼻と指。あきらかに血液が通っています。「それ、凍ってないじゃん!」思わず画面に突っ込み入れました。

 「なぜ登るのか?」 「そこに山があるから」みたいなステレオタイプな問答が作中であるのですが、さてどうなんでしょう? 生きるか死ぬかの瀬戸際の体験を何度も繰り返す人が欲しているのは、おそらく「生きているという強烈な実感」「自分は神によって生かされているという感覚」ではないかと、個人的には思っています。

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