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2016/07/10

BD「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」感想

 少年合唱団を題材にした映画は、今までにいくつも名作があります。例えば10年以上前に大ヒットしたフランス映画に「コーラス」というのがあります。本作はそのハリウッドバージョンとでも言えばいいでしょうか。

 「コーラス」は、子役の魅力を最大限に生かした傑作でした。本作の主人公ステット君は、残念ながらコーラスのピエールやペピノには及びません。なにしろものすごく気むずかしそうな顔をしているので、ショタコンの支持は得られないかと(笑)。

 最初の演出が暗い。重そうな貨物列車がゴットーンと停まるシーンで始まります。車輪の狭い隙間から向こう側が見える。そこに佇むのはステット君。彼が狭い世界に閉じ込められている暗示となっているのですね。

 ステット君が気むずかしそうな顔をしている理由は、彼の家庭環境の設定にあります。そもそも庶子・・・つまり私生児です。そんでもって母親は重度のアル中。当然学校ではそのあたりが、からかいのネタとなります。学校で「昨日お前の母親がどこそこの男と一緒にいたぞ」と嘲笑される度に、ステット君はガチで報復攻撃し、停学処分を受けます。

 「コーラス」では、歌うことの喜びが、不良少年たちに目的を与え、人生を豊かにするという展開でした。「ボーイ・ソプラノ」でステット少年が更生した理由も、同じです。どうせ自分にはクソみたいな人生しかないと思っていたら、新しい世界が有り、そこには自分の居場所があり、こんな自分にも存在価値があった。それに気付いた、という、この手の映画の黄金パターン。安心して見ていられます。

 「コーラス」と違うのは、陰湿なライバルの存在。少年合唱団ボーイソプラノのエース。遠征バスの会話シーンで早くも嫌なヤツという演出がなされます。「いい声してるね。後ろでしっかりボクを支えてくれ」

 本番直前に、この陰湿ライバルに楽譜を隠され、もろに動揺した声でソロパートを歌いはじめるステット君。しかし、バスパートの少年がソロを歌いはじめると、その声の、その音楽の美しさに自然と身体が反応し、音楽の流れに身を委ねて自分のパートを美しく歌いきるシーンがあります。この時のステット君の感情の揺れ動きが、その声に実に見事に表現されていて、必聴シーンです。

 あと、寮の相部屋の少年も、すごく嫌なヤツとして描かれます。彼が部屋に置いているステレオセット、とってもお高そうな真空管アンプ(おそらく100万くらい)なんですね。普通の中学生が持つようなもんじゃありません。これだけで私的には、もうヤなヤツ決定です(プンプン)。 

 「コーラス」は収録がわりとオンマイクで、直接音が多くエコー成分少なめでした。それに対し「ボーイ・ソプラノ」は、高い天井のホールで歌うシーンが多く、収録もオフマイク。エコー成分たっぷりです。特にラストのハレルヤシーンの、どこまでも伸びきるハイトーンボイスの美しさときたら! 聞いていて心が洗われます。

 本作を楽しみたかったら、ボーイソプラノの高音と、ホールエコーの微小信号を繊細に鳴らしきることのできるステレオセットの使用を強くお勧めします。それこそ100万くらいの真空管アンプで(笑)! 

 映画館の大味なスピーカーでは、本作の音の良さは、十分に再現できなかったのではないでしょうか。

 あと、日本人向けサービスシーンが二カ所ほどあります、「スシ」と「ホタル」。それぞれお笑い系と感動系。この二つはぜひご自分でご確認ください。

 

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