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2016/06/05

森越智子「生きる 劉連仁の物語」感想

 今年もついに、青少年読書感想文コンクール課題図書の紹介シーズンがやってきた!! まずはノンフィクション分野から。

  昔、茨木のり子氏の「りゅうりぇんれんの物語」という叙事詩が、集団読書テキストとして各学級に置いてあった。本書はその叙事詩をベースにして物語風にしたものを前半に、その後の日本政府の対応を後半に配した、実話を基にした一冊である。

 主人公は、第二次大戦中に日本軍によって、強制的に中国農村部から連行され、北海道の炭鉱で石炭の採掘に従事させられた。いわゆる「中国人強制連行」である。中国人労働者は完全に使い捨てであり、怪我人・病人は放置という、人権のまったく無視された劣悪な労働環境であったらしい。ある時、劉連仁は、便所を潜って採掘所から脱走するのだが、どっちに逃げたら良いかわからず、さまよい歩く。日本人の目に触れぬよう、北海道を転々と逃げ回り、14年後、雪の中で衰弱しているところを発見されるという、驚きの実話。

 前半の「劉連仁の物語」の部分は、茨木のり子氏の叙事詩をそのまま使ってもよかったのではないかという気もする。完成度がとつもなく高いからだ。今はネット上で読むことができるので、本作と比較してみるのもよいのではないだろうか。

 後半部の、戦後補償問題の部分は、日本人としては読むのがつらい部分であろう。特に、ドイツとアメリカが、戦時中の非人道的な行いに対し、きちんと謝罪と戦後補償を行っているのに対し、日本は・・・という部分は、正直きつい。

 このあたりは去年公開された映画「顔のないヒトラーたち」も併せて見ることをおすすめする。若きドイツの法曹が、自分たちの父親世代が、アウシュビッツで行った非人道的行為を裁く! という、実話を基にした映画である。見ながら何度も「ドイツ人すげえ」とつぶやいたのを覚えている。自分の父親達を裁くことを、ドイツ国民のいったい誰が望むというのか? 自問する主人公は、何度も途中でやめようとするのだが、結局、被害者の気持ちが一番であると腹をくくるのだ。ほんとに「ドイツ人すげえ」である。日本人はいまだにそれができていないのだから。

 感想文を書くのなら、以前紹介した「その年におこった大事件を、さりげなく混ぜ込んで書く」というテクニックが使えそうだ。ほら、同じく北海道で、水だけで1週間もサバイバルした小学生の事件があったじゃないか。サバイバル能力をテーマにすれば、そこそこ書けそうだぞ。あと、いざという時のために、やっぱり勉強は大事だよね! とか。(地理を知っていないと、どっちに逃げればいいのかわからない・・・とか、方角がわからない時に、何を手がかりにして南北を知ればよいかわからない・・・とか、空腹時にいきなり腹一杯食べると、消化器官が拒絶反応を起こす・・・とか)

 戦後補償という重たいテーマに正面から向き合うのなら、オバマ大統領の広島演説を参考にするとよさそうだ。原爆投下という、非人道的兵器使用に対する、明確な謝罪の言葉はなかった。しかし、あの演説を聞いたほとんどの日本人は、「謝罪を得るまでは前には進まない」のではなく、「核廃絶の道に向けてともに進もう」のほうを選んだのではないだろうか。オバマ大統領の演説からは、われわれ日本人が戦時中に行った非人道的行為に対して、どう向き合えばよいか、そのヒントが感じられるのだ。

 

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