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2016/05/08

真藤順丈「夜の淵をひと廻り」感想

 真藤順丈の作品を読むのは「墓頭」「黄昏旅団」に続いて三作目となります。

 前二作は、いずれも心の病んだ人たちがどのような行動をおこすかをテーマとしたものでした。本作は、交番のおまわりさんが主人公らしく、表紙の絵も、自転車に乗って町を巡回するほのぼの系(笑)。当然こちらも油断して読むじゃないですか。今回は普通におまわりさんが、遭遇する難事件の数々を解決するパターンの小説だろうって・・・。読みが甘かった。真藤順丈の作品がそんなはずはないのですね!

 交番のおまわりさんが遭遇する事件は、いずれも心の病んだ人が起こしたものばかり。普通のおまわりさんでは解決できないでしょうが、主人公は違います。なぜなら、主人公も心が病んでいるから。冒頭の事件で、彼の心がどのように病んでいったかが描かれます。さらに、心の病んだ彼が、次々に同類と遭遇し、同類であるがゆえに、彼らの心理が把握でき、彼らの行動を予測でき、事件後に犯人はどこで何をしたかを推理でき、解決にいたるというパターン。

 こういうパターンのミステリー小説は、最近増えてきたのかもしれません。普通の人には心が病んだ人の心理は読めない。だから事件解決は不可能。でも探偵や警察官が、犯人と同じように心の病んだ人であるならば、犯人の心理が読める。名探偵ホームズが、このパターン(実はホームズは高機能社会不適合者《アスペルガー症候群?》だったという)でリメイク(カンバーバッチ主演)されて人気を博しました。それでもここまで振り切った作品は初めてではないでしょうか。

 その主人公が、事件で親を亡くした女子中学生の後見人となり、親代わりとなって同居をはじめるのですね。章が進むにつれ、この女子中学生が、だんだんきれいな娘さんに成長し、やがて結婚し、主人公のもとから独立していく様が、わずか2~3行程度で描かれます。ほんのわずか描かれるそのエピソードが、実になかなか効果的。結婚式のスピーチなんか、勝手にいろいろ想像してしまって、号泣ものでした(笑)。

 真藤順丈、今後も目の離せない作家となりそうです。

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