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2016/05/29

白岩玄「ヒーロー!」感想

 「野ブタ。をプロデュース」の白岩玄最新作

 今回も高校が舞台。

 本の帯には「学校の平和を守るためヒーローばかの男子とひねくれ文化系女子が立ち上がる!」「大仏マン・ショーでいじめをなくせ!!」「今、正義とは何かを問う、『野ブタ。をプロデュース』を超える痛快学園小説」「学校のいじめをなくすため、大仏のマスクをかぶり、休み時間ごとに、パフォーマンスショーをする新島英雄とその演出担当の佐古鈴。二人のアイデアは一見、成功するかに見えた。だが無愛想な美少女転校生が新たないじめの標的になり、佐古の唯一の親友・小峰玲花が、敵となって立ちはだかる!?」とある。なかなかに的確なあおり文句だ。

 特に「正義とは何かを問う」のあたり、いじめ問題だけではなく、昨今のネットバッシングに対する警鐘となっている。「僕は人間の心の中に宿る正義っていうものが怖いんだよ。僕らが正しさを掲げるときには必ず見えなくなるものがある。相手を自分と同じ人間であることを忘れてしまう。相手の尊厳や、大切なものをないことにしてしまう。それは別にいじめに限ったことじゃないんだ。この世の中にある争いや啀み合いはみんなそうやって生まれてる」「正しさは人から優しさや思いやりを奪うんだ」というセリフが胸に刺さる。正論を振りかざし、立場の弱い者に襲いかかってくるクレーマーたちが、こんなにも増えた今だからこそ、本書のこの主張には価値があるのではないだろうか。

 ヒロインの佐古は自分のことを「根暗なブス」と表現。外見ではなく、自分の演出家としてのプロデュース能力に、自分の存在価値を見いだしたくて、今回のパフォーマンスショーに手を貸す。つまり動機が自分のため、つまりエゴなのである。ところが、彼女と関わる周辺の人物たちは、いじめられている友人を救えなかった自分に対する自責の念で動いている。佐古はそれに気がついた時、「根暗なブス」を卒業する。主人公が成長する王道のパターンではあるのだが、脇役たちが、今時こんないい人いないだろみたいな人物ばかりで、おかげで読後感が実に爽やかなのだ。

 結末もなかなか素晴らしい。佐古が一歩を踏み出すところで、本編をぶった切っている。この後の展開は読者が想像しろという、よくあるパターンと思わせて、実はその後に「どうぶつ物語 ~その後の演劇ショー~」という短編集がついてくるのだ。「そうか、白馬の王子様の後は、こういうストーリーを上演したのか。これなら佐古も目的達成か?」と読者に思わせるような、絶妙の仕掛けなのだ。

 テーマもよかったけど、この最後のしかけも面白かった。特にラストの「スカン子さん」の叫び(笑)。

 ただ、「野ブタ。・・・」は堀北真希主演でテレビドラマ化され、娘が「そんなの、『野ブタ。』じゃないじゃん」と憤っていた。本作も、もしテレビドラマ化されるとしたら、ヒロイン佐古の外見はイケてない設定なので、果たしてどうなることやら・・・。

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