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2016/03/27

映画「ちはやふる 上の句」感想

 結論から言うと、たいへん素晴らしい出来映えであると感じました。

 まず必要以上に鬱陶しい演出がない点がよかった。肉まん君のテニス部奮闘シーンや、千早の大江さん捕獲シーンあたりがちょっと鬱陶しかったくらいです。

 和歌にはダブルミーニング(二重の意味)が施してあることが多く(掛詞という)、千早はそれまで知らなかった「ちはやふる」の歌の、真の意味を大江さんからレクチャーされるシーンがあります。この時、なるほど、それで瑞沢高校のジャージの色設定は赤だったのかと納得。映画はマンガと違ってカラーですから(笑)。

 3人が小学生時代にチームを結成したころのエピソードは、今回の映画では回想シーンとして使われます。特に、太一が新のメガネを隠すエピソードなんか、実に効果的です。自分が競技カルタの勝負所でことごとく運に見放されるのは、この時の悪事を神様が知っているからだと言うのですね。自分で自分の嫌な部分を、逃げずに正面から見つめる、まさに青春の王道という感じで、実にピュアです。

 さらにこのシーン、名歌「神のまにまに」をからめてきます。ベストを尽くし、後は「神の心のままに」という展開になるのですが「まにまに」は娘が好きな歌なので、特別な思い入れがあったりします。この歌にこんな使われ方があったとは・・・。感動しました。

 太一が千早と新との恋の関係を、フェアに進めようと決意するシーン(電話番号渡すシーン)なんかも、実に青春です。恋を自分に有利に進めることもできるのに、「俺って嫌なヤツなんだ」と二度と思わなくてすむ方を選ぶという・・・太一いいヤツ(涙)。

 また、音楽が実に静かに効果的に使われています。無音のシーンが多く、競技カルタの緊張感がひしひしと伝わってきます。気がついたら、姿勢ただして映画に見入っている自分がいました。

 エンディングのスタッフロールではPerfumeの「FLASH」が流れるのですが、「ちはやふる」とPerfume には案外共通点が多いことに、ふと気がつきました。

 ①小学生時代に3人組を結成した点。その絆がずっと揺るがない点も。

 ②中心人物が天真爛漫キャラである点。他の二人や周囲のスタッフたちが、その天然キャラに吸い寄せられ、どんな苦難も一緒に頑張って乗り越えていこうとするあたりも。

 ③文学・音楽=文化的と思いきや、実はかなり体育会系的な点。

 ④百人一首もPerfumeの楽曲の歌詞も、意味が多層的になっているものが多く、多様な解釈が楽しめる点。

 ⑤日本の文化を象徴している点。

 ・・・Perfumeのどこが日本的? と思うかも知れませんが、「礼儀正しく奥ゆかしい」「黒髪」「黒人のように、リズム感や瞬発力で勝負するのではなく、日本人らしい繊細かつ精密なシンクロパフォーマンスで勝負」「テクノポップ=テクノロジー(技術立国ニッポン)」といった実に日本人らしい際立つ個性があるから、海外でも一定数以上の需要があるのではないでしょうか。

 映画は最後に、下の句の予告で終わります。ライバルのかるたクイーンがなかなかかっこいいぞ。ああ、早く続きが見たい(笑)。

 

 

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» ちはやふる 上の句 [象のロケット]
綾瀬千早、真島太一、綿谷新の3人は幼なじみ。 彼らは“競技かるた”でいつも一緒に遊んでいたが、家の事情で新は福井へ引っ越してしまう。 …瑞沢高校へ進学した千早は、新に会いたい一心で“競技かるた部”創設を決意し、高校で再会した太一とともに部員集めに奔走する。 古典大好き少女・大江奏、“肉まんくん”こと西田優征、“机くん”こと駒野勉の5人で結成された弱小チームは、全国大会を目指し東京都予選に臨む…。 青春ドラマ前編。... [続きを読む]

受信: 2016/04/06 11:24

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