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2016/01/03

朝井まかて「藪医 ふらここ堂」感想

 「恋歌」で直木賞を受賞した朝井まかての新作。江戸中期の講釈師、馬場文耕の「当世武野俗談」に出てくる小児科医、篠崎三哲をモデルにして書いたそうです。

 とはいえ主人公は三哲の娘、おゆん。極度の人見知りで、同年代の若い女性とまともに会話できないという設定。ろくに客の来ない父の小児科で、受け付けの仕事をしています。タイトルの「ふらここ」はブランコのこと。小児科医の庭の山桃の枝に吊るしてあって、近所の子ども達の憩いの場となっております。

 藪医とありますが、実は腕前は相当なもの。例えば、風邪をひいた子どもに、布団でくるんで暖める看病を見て、「風邪を引いたら暖めて汗を出させるのがいいって療法は、ありゃ迷信だ(中略)風邪が怖いのは熱じゃねえ。脱水の症だ」と言って服を脱がせ水を飲ませたり、やけどの治療に「躰の皮が焼けちまってんのに、それを急に冷やしたら皮がちぢれて縮んじまう。(中略)熱い手拭いを当てて、皮を守れ」と言って、熱い湯で絞った手拭いで手当てさせたり。知識は最新の医学レベルですぜダンナ! さらに天才少女の心の病は、見栄っ張りな親の過干渉が原因であると看破するあたり、児童心理学にも精通してらっしゃる。すごいぜ! (ほらそこの、「世の中バカばっか」みたく言って目ぇつり上げてる母娘さん。これあんたたちの事だよ。読みな)

 そんな三哲の腕をわかってか、近所の果物屋の息子、次郎助が弟子入りするのです。しかしながら、幼なじみのおゆんと次郎助の関係はなかなか進展せず。するとそこへ、第三者たる勝ち気な若い娘が介入し、「あんた次郎助のこと、どう思ってんの(中略)あたしは次郎助に命懸けだから」と宣戦布告(笑)! あとは皆様ご想像の通りに話は展開します。

 頭は良いのに世間に踏み出す勇気がない若い娘が、周囲の影響を受けて一歩を踏み出すという王道のストーリー。安心して読めます。ふらここが、正と邪をいったりきたり、病の状態と元気な状態をいったりきたり、それは人生も同じではないかと暗喩していて、ちゃんとタイトルが主題にからんでくるところもさすが。このままテレビの人情物時代劇に使えそうです。

 会話にちょくちょく「俺、本気だぜ」とあって、ルビに(まじ)とか出てくるのですが、最近は時代劇もこんな感じなんでしょうか? いちいち引っかかる私の感覚が古いのかなあ?

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