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2016/01/31

ピエール・ルメートル「天国でまた会おう」感想

 去年「その女アレックス」で話題を呼んだピエール・ルメートルの新作

 ジャンル的にはピカレスク・ロマンと言えそうです。ただ、前作のような、刑事対犯罪者という構図ではないですし、ミステリーやサイコサスペンスの要素もありません。

 主役は一応、優柔不断なアルベールと、爆撃で顔の下半分を失った天才画家エドゥアールの二人・・・という形になっていますが、「その女アレックス」と同様、真の主役は女性ではないかと思わされる作品です。

 なにしろ前述したとおり、アルベールは小心者で優柔不断な男ですから、エドゥアールとの詐欺行為にも、常におどおどビクビクしっぱなしです。とても主役が務まるキャラではありません。一方相棒のエドゥアールは、自分の命など省みない無鉄砲かつ破天荒な行動の連続で、終末がいつ来ても構わないというデカダンスなキャラ。これも主役は務まらない人物です。足して2で割るとちょうどバランスよくなるんでしょう。彼らの企みは奇跡的に成功します。

 クールなのはエドゥアールの姉、マドレーヌです。男前のだんなと結婚するのですが、子どもができたら「あんたと結婚したのは、男前の子どもが欲しかったから。子どもができたらダンナはもう用なしよ、ハイサヨナラ」的な態度を取り、決然と自分の人生を歩んでいくのです。強えよ姉ちゃん!

 同じくらいクールなのが、アルベールの恋人ポリーヌ。アルベールから「実はあれは僕がやったんだ」と告白され、海外逃亡のための切符を見せられた時の決断の早さときたら! 優柔不断なアルベール君の未来はこれでほぼ決まったな!!!的瞬間でした。まあ美人で聡明かつ決断力のある奥さんの尻に敷かれるのですから、きっとあの後、彼の地で堅実かつ幸福な人生を送っていることでしょう。

 これからも、女が男をやりこめる作品を書き続けるんでしょうね、この作家さん(笑)。

 

 

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