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2015/10/11

エイドリアン・レイン「暴力の解剖学」感想

 「黄昏旅団」「エクソダス症候群」ときて、いよいよ「暴力の解剖学」・・・あきらかに読書傾向が偏っているなあと思います。いずれも精神疾患を扱ったものばかり。私の心が病んでいる証拠でしょうか?

 本書のサブタイトルは「神経犯罪学への招待」。過去の残虐な大量殺人犯には、他人の痛みを感じることが出来ない(共感力の欠如=サイコパスと言う)脳の構造が共通しているとか、それは遺伝と環境の両方が関与するとか、前半は既にどこかで読んだことのある内容がほとんどです。(当ブログでもこれに関連する書籍はたびたび取り上げています。→「その後の不自由」「脳の中の幽霊 再び」「やわらかな遺伝子」「壊れた脳 生存する知」)

 本書が新しいのは、最終章で提案された「ロンブローゾ・プログラム」です。 

 遺伝や生育歴や脳の構造や血流のスキャンなどによって、国家が国民全員を検査し、犯罪予備軍を特定、特別施設に、無期限収容するというものです。データが好転すれば、保護観察処分に、さらに好転すれば社会復帰もあるという、生理的に受け付けがたいプログラムです。

 さらに筆者は、子育て免許制度も提唱します。親になりたければ、子育てカリキュラムを受講し、試験に合格しなければならないというもの。これにより、遺伝的に殺人者になる資質を備えた子どもがいても、その後の養育方法によって、その資質の発現を抑え込めるというのです。あるいは、遺伝的な資質を持っていなくても、後天的な環境により、殺人者になってしまう悲劇を未然に抑えることができると言うのです。

 読んでいて、「これらは明らかな人権侵害ではないか」という意見と、「あらかじめ悲劇を押さえ込める方法があるのなら、なぜ手をこまねいている必要があるのか」という意見の、板挟みになります。読者はよく考えて、未来を選ばなければならないでしょう。既に世界のあちこちの国では、ロンブローゾ・プログラムに近い事が実施されていると、筆者は言います(性犯罪者に対しては、再犯を防ぐために犯罪者の情報を世間に公表、さらに性犯罪者の居場所を特定できるGPSチップを体に埋め込むなど)。

 個人的には、義務教育の必修科目として、「子育て」を取り入れるべきという意見には、おおいに賛成です。実は以前からその必要性を強く感じていたからです。

 進学高校の保護者を見ると、子どもの教育にコストをかけることのできる社会的に地位の高い家庭が大半です。お金がないのに進学校に入ってくる生徒の親は、たいていが先生です。なぜ先生の子どもは進学校に入ることができるのか? 別にコネとかあるわけじゃありません。単純に大学の教育学部の教員養成カリキュラムに「児童心理学」「教育心理学」が必修として存在するからです。つまり先生は皆、子育てカリキュラムを受けているのと同じなのです。そしてこれが、こんなにも効果がある。そんなすばらしいカリキュラムを、親になろうという国民全員に受けさせることができれば、どれだけ学力不足で就職難に陥る子どもを減らせることでしょう。そうすれば、社会保障にかけなければならない国家の予算も、大幅に削減できるはずです。だったら、義務教育として、小中学校の技術・家庭科の授業に「子育て」を取り入れればいい。ずっとそう感じていました。

 そういうこと提案する政治家、出てきませんかね?

 

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