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2015/09/28

宮内悠介「エクソダス症候群」感想

 SF小説である。タイトルは、脱出衝動を伴う妄想や幻覚等の症状をさす。どこからの脱出かというと、火星から地球へ、である。舞台は近未来の火星開拓地なのだ。

 かつて行われていたロボトミー手術は、抗精神病薬の発見にとって変わられた。いずれも患者の沈静化に効果があったが、患者の人格を破壊する点でも効果があった。

 本書は、このような刺激的な内容が、次から次へと読者に向けて乱射される。他者の心の痛みが理解できない、いわゆる共感力の欠如したサイコパスが、普通に社会生活を送れているのは、実は環境要因が大きいなどと書いてあるのを読むと、ひょっとしてこれはオレのことかと背筋が冷たくなってくる。

 各章の扉裏には様々な書からの引用があり、本書のサイコパスっぽさをいやがうえにも高めてくれる。例えば、第七章の扉裏はこうだ。

『実はカンボジア人は「うつ」を適切に表すことばをもたない。すべての困りごとは「ビバーチャット(たいへんだ)」ということばでまとめられる。(中略)ポルポトにより百万人以上の国民が大虐殺を受けた。(中略) トラウマとかうつとかいう概念をもたない人々に、どうしてPTSDが存在するといえるのであろうか。  -野田文隆「文化と精神医学」』

 同時にこの引用は、本書のストーリー進行を予言する役割も努めている。

 「追い込まれたカルトの末路は集団自殺」など、以前紹介した「黄昏旅団」に通じる展開も有り、最近よく似た傾向の本ばかり読んでるなあ、偏ってるなあ。ひょっとして自分、病んでる? とか思ったり(笑)。

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