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2015/08/02

澤田瞳子「若冲」感想

第153回直木賞候補作。残念ながら受賞はなりませんでした。

 初めて若冲を知ったのは宇多田ヒカルが2002年に出した「SAKURAドロップス」のPV。白い象さんがゆらゆらお鼻を揺らしているのを見て、「あれは何だ!!!」 結構衝撃を受けた覚えがあります。

 やがて美術系雑誌や教育系TV番組で頻繁に若冲が取り上げられるようになりました。私もプライスコレクションが日本で公開された時は「鳥獣花木図屏風」の白い象さん見にいきました。ついでに静岡県立美術館の「樹花鳥獣図屏風」も見に行って、二つの違いにびっくりした記憶があります。個人的にはプライスコレクションの、象さんが大胆にデフォルメされてマンガチックなところが大好きです。ただ、この二作については真贋論争があり、プライスコレクションのほうは若冲作ではないという説は割と有名なようです。

 本書は真贋論争について、おそらくこういう人物が若冲にこう関わって描いたものであろうという筆者なりの仮説を、小説という形で語っています。若冲の絵を一目見ただけであっさりとコピーする能力を持ち、若冲と対立する人物を設定しています。この二人が互いに切磋琢磨することで、お互いの芸術を高めていったというフィクション。正直、まあそういうことがあったことにしてあげてもいいかなあ・・・という程度です。

 妻は「私のイメージしている若冲と違ってたらハラたつから読まない」と申して本書を手に取ろうともしませんでした。正解かも。

 私も、若冲はもっと、普通の常識人とはかけ離れた感覚を持った、ちょっと変わった人物なんだろうと思っていたので(芸術家にはそういうタイプ多いですから)、本書のような、常識的な価値判断をし、一般人と同じ感情を持った人物が、死んだ妻に対する後悔をエネルギーとして作品に立ち向かうという展開には、あまり面白みを感じませんでした。5年か10年くらいなら、そういうモチベーションで作品制作もできるかもしれないけど、一生ずっとって、どうなのよ? と思うわけです。

 直木賞をとれなかった理由はこのあたりにあるのかも。

 文章はたいへんうまいのですね。若冲の絵の世界を見事に文字で表現してますし、京都の町の描写も、生活感があって素晴らしい。

 ただ、いまや若冲ファンは本当にたくさんいて、みんな自分の心の中に自分だけの若冲のイメージをもっていることでしょう。自分のイメージが壊されるのは誰でもいやなものです。今回は題材として選んだ相手がよくなかったということで、次回作に期待ですね。

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