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2015/06/21

本田昌子「夏の朝」感想

 今年の中学生読書感想文コンクール課題図書です。

 タイトルが「夏の朝」・・・。

 これって、名作「夏の庭」に似てますよね。読む前から心配になりました。ケンカ売ってるわけじゃないだろうけど、大丈夫なの(笑)?

 読む進めていくと、どうやら子どもとおじいさんの心の交流がテーマらしい。おいおい、絶対これケンカ売ってるぞ。
(ちなみに「夏の庭」は1993年の読書感想文コンクール課題図書だったりします。)

 違いは本作にファンタジー要素があるところ。作者は以前SF小説を書いたことがあるとか。本作もありえない設定で、主人公の女の子が過去に何度もタイムスリップし、おじいさんとある約束をします。

 あ、タイムスリップする少女の話なら、これも過去の名作が・・・。

 本作には、未来人のクスリ(ラベンダー)を嗅ぐとタイムスリップするという、ちゃんとしたSF設定なんかはありません。なんと、おじいさんの育てたハスの花の香りでタイムスリップするという、科学的根拠のまったくない展開。つまり本書はSFじゃなくて、ファンタジーで括れということらしいです。

 で、困ったのは、おじいさんや親戚のおばさんたちの過去を知ることで、少女が成長するというストーリー展開。え、もうちょっと主人公に試練とかないの?おじいさんには辛い試練があったみたいだけど、肝心の主人公は? おじいさんの話聞いて、謎解いて、それだけで継母と和解しちゃって現実社会復帰していいの?

 ラストのエピソードも、いるんだかいらないんだか。謎が解けたところでエンディングにしてもよかったんじゃないんだろうか。後がどうなるかは、読者が想像できるよう、伏線をいくつか用意して終わらせればよかったのに。ちょっとこれは書きすぎのような気がします。

 挿絵は好みがわかれそう(私はこういう傾向の絵は苦手です)。かなり昭和っぽい雰囲気です。まあタイムスリップして昭和に戻る話だから、これでいいのかも知れませんが。

 ただ、小説がラストを書きすぎなのと同じように、挿絵もちょっと描きすぎじゃないでしょうか。蓮の花とか描くのはいいですよ。でも、主人公の容姿まで克明に描いちゃったのはまずいんじゃないですか。完璧に昭和の女の子ですよこれ・・・。どんな女の子なのかは、読者に想像させたほうがよかったかもしれません。

 残念ながら本作、「夏の庭」を越えたとは言えないでしょうね。あと、「時をかける・・・」の方も。

 同じファンタジーなら、以前紹介した「赤いペン」のほうがずっと完成度が高かったように思います。長田弘氏の推薦は、だてじゃないです(あの本紹介した直後に、長田弘氏は亡くなられました。こんな事ってあるんですね)。

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