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2015/06/14

篠田節子「インドクリスタル」感想

 インドの山奥で、宇宙開発に必要な水晶振動子を作るため、純度の高い天然クリスタルを手に入れようと奮闘する、日本の小さな会社の社長の話。

 値段のふっかけ方とか、交渉の仕方とか、騙すほうより騙されるほうが悪いといった商習慣は、タイなど、東南アジアの国々とさほど変わりはない。変わっているのは、いまだに根強く残っている身分差別。先住民、特に女性への差別が強烈。自立できる環境にいるインド女性はごく一握りであると、痛切に感じさせられる作品。

 比較対象として、主人公の娘が、何不自由なく日本の大学に通い、スポーツに汗を流し、アイドルグループに夢中になり、さらに英語を好きなだけ学べる環境にあるように描いてある。しかもその娘が、成人してNPOに入り、海外それもマニラのスラムなどで、NPOの支援物資がちゃんと現地の人々の手に渡っているかを確認する仕事をしているという設定。普通はなんと立派な娘だと感心するところだが、これが後半で鮮やかにひっくり返される伏線となっている。

 悪い奴が主人公となるピカレスク・ロマンは、最近だと「その女アレックス」が記憶に新しい。あの作品も、虐げられた若い女が、男たちに復讐するため敢然と立ち上がるストーリーだった。本作も、虐げられた女性ロサが、徹底的に怜悧な頭脳と、特異なその能力で、周囲の男社会に復讐するストーリー。しかも、若く魅力的な女でありながら、色仕掛け一切なしなところがすごい。読み始めたら止まらない。一気読みである。作者はそこに、環境破壊問題や、放射線残土の問題をからめ、先進国の開発が、地元の人間の暮らしをいかに破壊するかを描く。社会派小説でもあるのだ。

 ロサにさんざん引きずり回された主人公が、最後の最後にロサに送るメールに、ちょっと感動。

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