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2015/05/31

塚本勝巳「うなぎ 一億年の謎を追う」感想

 今年の読書感想文コンクール課題図書、ノンフィクション分野です。

 「ブロード街の12日間」での、コレラの感染源を突き止める調査方法と、本作の、うなぎの産卵場所を突き止める調査方法がよく似ている! というのは先週述べたと思います。たまたまかぶったのか、それとも意図的にそうしたのかはわかりませんが。

 本作はあくまでも中学生向けに、こうやって調査するんだよとか、こういう苦労があったけど、まあなんとか乗り越えてきたよとか、理系の子どもの夢や希望を大事に育てようじゃないかという編集方針がよくわかる一作に仕上がっています。

 しかし、行間のあちこちに、ブラックな実態がちらちら窺えたりもします。

 例えば、一体誰が、どこからどうやって研究資金を引っ張ってきたのか?

 かなり年月かけて、やっとここまでたどり着いた・・・という書き方しかしていませんが、当然のことながら、長年にわたり失敗続きのこの調査、予算をぶんどるため、さぞかし多くの苦労があったことと思われます。おそらくライバルを蹴落とすための色々な裏工作をやってきたことでしょう。しかしそれらについては本作、一切触れておりません。

 さらに最近理系大学では、教授にさんざんこき使われ、心の病にかかって行方不明者続出と言われる助手たちの存在が、本作ではほとんど触れられていません。限られた予算内で研究成果を出すには、徹底して人件費を抑えるしかない。ブラック企業も真っ青と噂される助手たちの勤務の実態はいかほどのものだったのでしょう?

 あまり穿った見方ばかり書いてはなんですので、普通に感想を。

 うなぎと言えば、浜名湖の養殖池で、水中に酸素を送り込むための水車がぱちゃぱちゃ水をはね上げていた40年前の光景が脳裏によぎります。今では輸入うなぎに押され、養殖池はなくなってしまいました。

 そんなことより、うなぎの産卵場所が、実はごく狭い地点に絞られるという事実が、結構衝撃的でした。そこでごっそり乱獲すれば、シラス(うなぎの稚魚)不足もなんのその。一攫千金も夢ではありません。短期間で大金掴むことしか考えていないタイプの人間は一定数以上いますので、このままでは、うなぎの絶滅はほぼ間違いないのではないかと思われます。

 人工的に産卵させ、孵化させ、稚魚から成体にまで育てる技術が、はたして確立できるかどうか! 問題山積で、どうも無理なんじゃないかと思われます。

 中学高校と、浜松で暮らしていたので、うなぎは大好物。今も法事であちらに行くと、必ず食べて帰るのですが、それもまもなく出来なくなるのでしょうね。長生きは、あまりしないほうがいいのかもしれません。

 

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