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2015/04/12

DVD「コーヒーをめぐる冒険」感想

 ドイツ映画

 邦題は「コーヒーをめぐる冒険」となっているが、別に村上春樹の「羊をめぐる冒険」みたいに、羊(コーヒー)が物語の重要な鍵となっているわけでは、全然ない。原題の「Oh boy」のほうがこの作品の雰囲気をよっぽどよく表している。

 早朝、彼女の「コーヒー入れてあげようか」という申し出を断ったばかりに、その罰があたったかのように、その日一日、合計5回にわたり、主人公のニコはコーヒーを飲み損なう。コーヒーマシンが壊れていたり、コーヒーポットが空だったり、自販機が売り切れだったり。代わりに彼は毎回タバコを吸うのだが、ライターを持っておらず、いつも通りがかりの人や、近くでタバコを吸っている人に火を借りる。そして、おもしろいことに、誰も火を貸すことを断らないのだ。コーヒーには見捨てられても、タバコの火には見捨てられていないのである。制作者は愛煙家?

 1日のうちにニコは、次から次へ、ちょっと変わった人々と出会う。

 妻とうまくいっていないらしいアパートの上階の住人。役者崩れの友人。昔太っていたからという理由でいじめたことのある、今はスリムになった、でもヒステリックな同級生の女の子。突然第二次世界大戦の頃の思い出話を、一方的に語り出すじいさん。ニコは彼らの言動に戸惑いながらも、なんとかニュートラルな反応を心がけようとするのだが、なにしろ取っ替え引っ替え次々に変な人物がニコに絡んでくるものだから、心の落ち着く間がない。しかし、ベルリンの美しい夜景の映像と、アコースティックピアノの静かな音楽が、やさしくニコを癒やす。翌日の朝、ニコはやっと一杯のコーヒーにありつき、深くため息をつくシーンでエンディング。まさしく「Oh boy(やれやれ)」な映画なのだ。

 ニコが勝手に大学を中退したことを知った父親が、ニコのクレジットカードを使用停止にし、「これで靴を買え。髪を切って仕事を探せ」と言って、ニコに二枚の紙幣を渡すシーンがある。いつまでも息子にスネをかじらせている日本の激甘保護者たちよ。見習え(笑)!

 アパートの上階のオヤジが、手土産として妻の手作り肉団子を大量に持ってやってくる。すごくまずかったらしく、後でニコはそれをトイレに流すシーンがある。なんだこのシーン? と思っていたら、次のシーンで役者崩れの友人マッツェが「この腐った町はすべて水洗トイレに流してしまえばいい」みたいなセリフを言う。これは映画「タクシードライバー」の名ゼリフなのである。

 「やれやれ」な話の連続でありながら、所々にこういうクスリと笑えるポイントがあるところが、魅力の一つであろう。

 映像は白黒だが、フォーカスの合っていない背景部分のぼけ具合、粒状感がなんとも言えない味を出しているのも魅力的。

 

 

 

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