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2015/03/15

DVD「Little Forest 夏・秋」感想

 NHK「あまちゃん」の橋本愛主演。

 ストーリーは極めてシンプル。

 主人公いちこが、ひたすら自給自足でおいしいものを作って食べる。延々とそれが繰り返される。

 メニューは、夏だと次のよう。

1 ストーブパン その名のとおり、薪ストーブで焼いた天然酵母パン。

2 米サワー 米を発酵させて炭酸飲料のようにしたもの。 

3 グミのジャム

4 ウスターソース自家製

5 ハシバミで作ったヌテラ パンに塗って食べる。

6 ミズ 渓流のわきに生えている。茎をおひたし、漬け物、炊き込みご飯にしていただく。

7 岩魚の炭火焼きと岩魚の味噌汁

8 自家製ホールトマト

これで約50分。次に秋に移り、やはり秋の料理が次々と。料理のプロが監修したらしく、出てくる料理はどれも見るからにおいしそうである。

 合間に、田んぼの雑草取りをするシーンやら畑の草刈りをうるシーンやら、刈った稲を干すシーンやら、チェーンソー使って丸太切るシーンやら、チェーンソーの手入れをするシーンやら、斧で丸太を割るシーンやら、が入る。岩魚をさばくシーンや、合鴨を血抜きして毛を火で炙り、さばいていくシーンも入る。結構ワイルドなのだ。したがって本作、カエルを見て「うぇ、気持ち悪い」という女性には向いていない。

 そういうわけで、橋本愛、本作で結構いろんなことにチャレンジしている。本当に斧ふるってるし、本当に合鴨さばいているんだから。

 最初の10分くらいで、「湿度100%近い空気の抵抗感は、ヒレをつけたら泳げそう」という橋本愛のナレーションと同時に、手にヒレをはやした橋本愛が、空中を泳ぎ出すCGがあったり、「昨日掘り起こしたヨモギからもう新しい芽がふきだしていてゾッとする。緑の侵略者。畑も道も、雑草に覆い尽くされていく」というナレーションとともに、橋本愛の手から雑草がにゅにゅにゅっと伸びるCGがあったりする。おいおいこの映画は、主人公の独り言を全部CGで表現する映画なんか? と心配になったが、このパターンはここまでで終わり、以後は安定して料理をするシーンとその食材にまつわるエピソードが語られ、最後は実食シーンで締めくくられる。

 行間から次のような設定らしいことがわかるようになっている。

 山村で母と二人暮らしをしていた主人公いちこ。高卒後、町に出てアパートを借り、彼との二人暮らしを始めるがうまくいかず、山に戻る。ところが母も山村を出て行ってしまったらしく、古い家で橋本愛が一人暮らしを始める。高校時代の親友キッコとは今も交流があるらしいが、それよりも、2年後輩のユウタが、どうやら現在のいちこの彼であるらしい。作りすぎた米サワーが発酵しすぎてアルコール飲料になったものを「飲みにこない? じゃ歩いて来なさいよ。キッコにばれるから」などという電話のシーンがあったりする。でも二人が米サワーを飲んで笑うシーンまででそのカットは終わり、その後、二人が何をしたのかは一切描かれない(笑)。そういう映画なので、お子様も安心して見られます。田舎で美人が一人暮らししていても、誰も襲ったりしません。安心です(笑)。

 これ、原作は漫画だそうで、実に驚きである。このスローな展開で、ここまでドラマの少ない話を、どうやって漫画で表現し、しかも一定の読者の支持を得るところまで持っていったのだろう? 

 こういう生活にあこがれる人は、確実にいるんだろうなと思う。けれど、農家の人がこれ見たら、きっと「こんなんじゃない」と言うだろう。そもそも、主人公、収入ないでしょ?

 現実的こういう生活するためには、まず固定収入が必要。それから山村での若い女性の一人暮らしは非常に危険。最低でもこの二点は解決する必要があるだろう。

 山村生活のいいところだけ見たい人向けの映画である。

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