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2015/02/14

佐藤正午「鳩の撃退法」感想

 佐藤正午久々の長編

 裏社会の連中が作った偽一万円札が、つまらないミスで表に流通してしまい、5~6人ほどの間を転々とする。床屋で使った金がその偽札だった!と気づいた主人公津田は、裏社会の連中から襲われはしないかと、ビクビク小心者の生活をするはめに。

 この主人公、元直木賞作家。今は女のところに居候しながら、夜のお仕事の女性たち専属運転手をしてなんとか生計をたてている。

 そういうわけなので、本書、未成年はお断りだよ!

 

 で、主人公の津田のキャラクター設定なのだが、とにかく性格が悪い。ひねくれている。たとえば、人が話していると、必ず本筋とは関係のなさそうな部分に質問を挟み、話の腰を折る。「どこまでつづくんです?」「そうだね。やっぱりどうでもいい」みたいなパターンを繰り返す。

 たとえば、人の名前をわざと間違えて呼ぶ。ドーナツショップの店員は、沼本と書いて「ぬもと」と読むのだが、津田はわざと「ぬまもと」と呼ぶ。本人が何度「ぬもとです」と言っても「な、ぬまもと」

 感化されやすい人は要注意。知らない間にあなたも性格悪い会話法が身に染みついてしまうかも。現に私は妻との会話が次のようなものになり、我ながらびっくりした。

 自動車保険のDMを手に取った妻。「これいるの」「ん、いやいらない」「じゃ捨てといて」「捨てといて? 今キミが持っているんなら、キミがそのまま捨てにいってくれて一向構わないんだが。そこをあえて私に捨てに行けとキミは言うのか?」「・・・いや、何かのついでに捨ててくれたらそれでいいのよ」「つまり私が捨てなければいけないという部分は変わらないわけだな。『じゃ私が捨てとくね』にはならないんだな。そうやってキミはそこに座って動きもせず、他人を動かすんだ。そういう人なわけだ。ハイハイわかりました。どうせいつかは捨てに行かなきゃならないんなら、今捨てますよ。ハイ捨てました」

・・・いや普段は何も言わずに捨てに行くんですけどね。妻もびっくりしてました。

 要するに言いたいのは、主人公、性格悪いんだけど、困ったことに嫌いになれない!!ということ。・・・やなヤツなんだけど、続きが読みたくなるというか、確かにセリフはカチンと来るんだけど、実はこの男のやってることは、結構まっとうだったりするし。

 行く先のない孤独な老人にアパートの手配をしてやったりとか、困っている女性にお金貸してやったりとか、下っ端構成員しかもかつて自分をさんざん殴った若い兄ちゃんに偽札発見の手柄をくれてやったりとか、居候先の女子大生に迷惑がかからないようコッソリ自分から消息を絶ったりとか。

 まあ女癖の悪いのは認める。「な、ぬまもと」が、ねじれた愛情表現なのだというのもわかる。

 だからなのか、女たちも津田のことを嫌っているのに、結果的にみな彼のことを助けてしまっているのだ。う~ん、うらやましい。

 

 

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