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2014/11/02

恒川光太郎「スタープレイヤー」感想

 SF小説です。前作「金色機械」では日本推理作家協会賞を受賞。本作が受賞後第一作となります。

 まず設定ですが、ほとんどゲームです。主人公は、ある日突然「おめでとうございます。1等あたりました。あなたは今日からスタープレイヤー」みたいに言われて、いきなり異世界に飛ばされます。そして「スターボードにお願いすればなんでもかなう。ただし10個まで」とか言われて、さて何を願おうか。

 現実世界の主人公は、ふらふらと不倫を楽しみ、夫から離婚を切り出され、職場を追われて無職になり、、最後に暴漢に襲われて片足不自由になるという、かなり痛い人生を送っている34歳独身女性なのです。う~ん、この主人公の設定、読者の心をくすぐります。彼女の、後先考えず欲望に正直に生きるフラフラ加減が、この後、ろくでもない願い事をしそうな予感を、いやが上にもかきたててくれます(笑)。

「石松くん(石松くんとは、スターボードの使い方を説明する案内人プログラムで、なかなかのイケメン)、足を完璧に治して、若返って、脂肪とって、ついでに顔のパーツもちょっとまあ、整形といいますか、変えることってできる? それ全部で願いをいくつぐらい消費する?」

「たぶん一つでできやすぜ」

いやいやいや、願いは10個までとか言ってたくせに、1個の願いでここまでかなうって、どんだけアバウトな設定なんだ! と笑ってしまいました。

 で、次に、現実世界で私をひどい目に遭わせたヤツに復讐だ。みたいな流れになるのです(願いをかなえることを、星を一個使うという)。

 

 最初はこんな風に自分の欲望実現のために星を使うのですが、後半になると、何に星を使うか悩み出す主人公。

 実はこの異世界にも現住人がいて、他のスタープレイヤーもいて、スタープレイヤーが勝手に呼び出した人間(自分好みのアイドルとか、イケメン俳優とか)がいて、国家間の争いがあって・・・。

 お世話になった人たちを救うあたりから、星の使い道が、人助けへと変わっていきます。ついには国家間の紛争に手を出して・・・。

 とまあ、現実世界ではふらふらした人生送っていた主人公が、異世界で星の力を使って人助けをするという、人生やりなおして、人として成長していくお話なわけです。

 ただ、現実世界でも実は我々は、小さいけれどもいくつかの星を持っていることに、ふと気づかされるのです。そして、それをどう使うかを決めるのも、自分の意志次第なのだと。使えば星がなくなってしまう事もだいたい一緒。自分の資産や時間や能力を、自分の欲望のために使うのか、それとも人のために使うのか。

「できないということは、心地のよい眠りに近い。何もかも諦めていい。できないのだから。仕方ないは魔法の言葉。それに比べて、できるということのなんと過酷なことか。できる人間には責任がある。できる人間はやらなくてはならない。私にはできる。」

 主人公のモノローグがぐさぐさと読者の心に刺さります。あいたたた。

 同時に主人公は葛藤します。

「私が呼び出すものは、どれも人が知恵と勇気で手に入れることのできるものばかり。間違っているような気がしないでもない。(中略)自らの汗と努力で築いてこそ意味があるものではないのか? 夢は己の力で叶えるもの。世界は人々が知恵と勇気で切り開くもの。」

 なんだか、似たようなことを、塩野七生「ローマ人の物語」で読んだような記憶が・・・。

 人は自分の力で手に入れたものでないと、大事にしない。人から与えられると、やがてそうされるのが当たり前と思うようになり、何の感謝も持たずにそれを浪費する。そしてやがて人は堕落していく・・・みたいな。

 娯楽SF小説ですが、いろいろ考えさせる仕掛けが施してあって、読み応えありました。ただ、最後のほうは、あまりに安易に人々の願いを叶えすぎてしまって、上記のようにかえって心配に・・・。続編もあるらしいので、そのあたりどのように展開されるのか、ちょっと不安で、なおかつ、どのようにその危機を乗り越えていくのか、興味のあるところですね。 

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