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2014/10/05

瀧羽麻子「ぱりぱり」感想

 天才詩人すみれと、その周囲の人々を描く連作短編小説。章ごとに主人公が変わる多視点型。妹、編集者、アパートの隣人、高校教師、同級生、母。それぞれ別の視点から見た天才少女の姿が描かれる。そして彼女の個性が、読み進めるうちに徐々にくっきりと浮かび上がってくる。

 視覚と聴覚が人並み外れて優れているのに、それ以外の味覚、触覚などはさっぱり、だとか、一つの事に熱中すると周りが見えなくなるとか、コミュニケーション能力に問題があるとか、天才と呼ばれる人たちに共通する、普通とは違うある種のパーソナリティを持っている。それでも、ふとした瞬間、さりげない言動に彼女の人柄がにじみ出る。そしてそれが彼女と関わる人たちの心を、最初戸惑わせ、その後少しだけ癒す。そこがいい。

 きっとすみれは、この後も、周囲の人たちに支えられながら、読者をはっとさせる詩を書き続けていくことだろう。

 

 音楽業界にも、天才的な表現力を持ちながら、コミュニケーション能力に問題を抱えるアーティストはたくさんいる。イノセントな彼ら、彼女らが、あのとんでもない業界でなんとかやっていけるのは、彼ら彼女らを理解し、周囲の雑音や誘惑から守り、支えてくれるバンド仲間やスタッフがいるからだろう。

 本作で困ったのは、すみれの書いた詩がどんなものか、一つでもいいから読ませてくれと、作者に言いたくて仕方ない気持ちになったところだ。なにしろこういう評価が作中に出てくるのだから。

「あの子はきっとわかっていない。自分が気ままにつむいでいる言葉がどれほどの破壊力をもって人の心を打つか、想像してみたこともないだろう」

「なんつうか、どっか連れてかれる感じ? トリップってやつ?」

ねぇ、読みたくなりません?

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