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2014/09/28

梨木香歩「海うそ」感想

 「冬虫夏草」の魅力にすっかりやられてしまい、その前作「家守奇譚」も読んで、すっかり犬のゴローのファンになってしまった私ですが、本作は犬のゴロー・・・いやいや綿貫君シリーズとは違って、文学部地理学科の学生さん秋野君が主人公。場所は南九州の小島。

 綿貫君シリーズとは違って、狸や河童は出てきません。そのかわり、良信の石切場だとか、良信の防塁だとか、恵仁岩とか、耳鳥洞窟だとか、伽藍や五輪の塔の遺構だとか、そういったものが、怪しげな伝説とともに、次から次へと出てきます。いったいどういう過去がこの島にあったのか、彼らはこの島で何を成し遂げようとしたのか、どれだけの人がこの島で命を落としたのか、作者は答えをすべて示すことはしません。ただ、こんな言い伝えがあるとか、こんな説があるとか、ここにこんな物があるとか、ヒントを示すだけ。秋野君も読者である我々も、それを手がかりに、この島で過去にあった出来事を、いろいろと想像するのです。そして、背中がゾゾゾとするのです。

 

 「色即是空」 今目の前に見える現象や事物はすなわち空である。タイトルの「海うそ」は島で見える蜃気楼のことを指すようです。目の前に見えるのに、それは実体のない幻なのだと。

 50年後に島を再訪する秋野じいちゃん。島には九州からの橋がかかり、ホテルやリゾート施設なんかもできていて、そのあまりの変わりように立ちすくんでしまいます。さらに、50年前にはあった、大事な遺物が、リゾート開発でがっさり掘り返されたりして、思わず拳を握りしめます。

 

 ところが、ラストで「色即是空」の続きが、なんと「海うそ」によって展開される。この最後の三ページの素晴らしさは、うまく言い表すことができません。「家守」シリーズのファンなら、迷わず手にとって読むべし。

 

 

 

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