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2014/08/17

映画「思い出のマーニー」感想

 自分は誰からも愛されていないと思い込んでいる少女、杏奈が主人公。

 冒頭、公園で遊ぶ幼児たちをスケッチするシーン。おそらく中学校の美術の授業。デッサンを見せてごらんと先生に言われる。おずおずとスケッチブックを差し出す杏奈。ひょっとしたら、絵で認めてもらえるかもしれないという、かすかな期待がある。しかし、先生がスケッチブックを手に取ろうとしたその瞬間、一人の幼児が遊具でケガをする。先生はそちらに向かう。杏奈の絵が日の目を見ることはない。

 さらに喘息の療養先では、杏奈に積極的に関わろうとしてくる地元の健康的な女子中学生を「豚!」呼ばわりする。 はっきり言ってやなヤツ。しかも言ってしまってから自己嫌悪に陥っている。だったら最初から言わなきゃいいじゃないかと言いたくなるが、わかっていても、ブレーキがきかないのだから仕方ない。だから心の病になり、それが原因で喘息になる。

 「この世界から私は必要とされていない」

そういう中学生女子の内面を丁寧に描いた良作である。決して派手なアクションシーンがあったり、心ときめくドラマチックな展開があったりするわけではない。マーニーの正体も、ほとんどの人が、杏奈よりだいぶ先に気づくだろう。わかりやすいのだ。

 ジブリの作品だからといって、「ナウシカ」や「トトロ」のつもりで見ると、おおいにガッカリするだろう。それくらい地味だ。宮崎監督も「映画化は無理」「内面を描いた作品だから」と、NHKの番組でのたまっていた。では本作はつまらないか? と聞かれたら、そんなことはない! と答えたい。

① 自分は不幸だと思っていたら、実はマーニーの方がもっと過酷な環境だった。それなのにマーニーはいじけていないし、明るく活動的だ。じゃあ自分はどうしたらいい? いつまでもイジイジしていていいのか?

② 自分は誰からも愛されていない存在だと思っていたが、実は自分の知らない所で、ものすごく愛されていた。

そういうわけで、杏奈は心の持ちようが180度くるんとターンする。喘息も治り、元気に都会に帰る。そういうストーリーを、細部を丁寧に描写することで表現した作品なのだ。

 たとえば、列車が駅に着くシーンが2回ある。降りてくる客はたった二人。最初におばあさん。そして次が映画の主要人物。わざわざこのシーンを描く意味は何か? それを考えると、細部の描写の重要性がわかると思う。地味な描写だが、こういう細部の積み重ねが、本作品の生命線なのだ。

 実は最初、本作を見る予定はなかった。しかし、美術監督が種田氏と聞いて気が変わった。PerfumeのPV「Cling Cling」を手がけたのが種田氏。その、細部までとことんこだわった世界の構築っぷりを見て、これは「マーニー」も見なくては! と思った次第。

 で、そっちの感想も述べよう。セル画の色彩には、特にこだわりは感じない。こりまくっているのは背景の描写だ。湿地帯の微妙な色彩。夕陽の当たり具合。さざ波がたつ時の水面の色の変化。古い屋敷の瓦や壁の質感。そこに夕陽があたった時の色合い。庭のトマトの質感。月を反射する水面。夜の屋敷の窓からこぼれる明かり。などなど・・・。

明らかに今までのジブリ作品とは色彩が違う。光の描写が実に巧みなのだ。 

いい仕事してるなあと、静かに感動。

地味にいい作品である。

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