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2014/07/14

パトリシア・ライリー・ギフ「語りつぐ者」感想

   今年の読書感想文課題図書シリーズその2。
 例によって「小説の書き方講座 泣ける話の条件」によれば、本作は以下の条件を満たしていると考えられます。

2 運命
身分や家柄、人種差別、貧富の差、有名な歴史的事実、社会の仕組み、遺伝性の病気などの運命が二人を切り裂く。本人の努力や人柄などではどうしようもない部分で悲劇に巻き込まれていく。また、そういう運命に必死で立ち向かっていこうとする健気な主人公の姿は、涙を誘います。

 本作のヒロイン・エリザベスの祖先ズィーは、アメリカの独立戦争という歴史的事実のせいで、母と父を次々に喪うという悲劇を味わいます。さらに自らも両手に重度のやけどを負うのです。

7 救われる話  
自分はどうしようもなくだめな人間だ。なんの取り柄もない、生きていく価値のない人間だ。と思っていたら、思わぬところに自分の長所や努力や人間性を認めてくれている人がいたというお話。

 本作のヒロイン・エリザベスは、不器用で容姿も平凡、しょっちゅうケアレスミスを繰り返す、何の取り柄もない少女だったのですが、ズィーのことを語る内に、語り部としての才能が自分のうちにあることに気づきます。
 そういうわけで、本作の最初の80ページくらいは、エリザベスとズィーの不器用さについての描写オンパレード状態なので、いらっとする読者も多いと思いますが、そもそもこういう構造の小説なので、そこはがまんして読み進めましょう。

13 自分より不幸な人との出会い
自分より不幸なはずなのに自分より不幸じゃない人との出会い。
自分は不幸だ不幸だと思っていたら、自分よりもっとひどい環境なのに、前向きに頑張って生きている人がいたりして、ショックを受けると同時に、自分の心のありようについて考え直す。いわゆる主人公が成長するパターンの一つですね。

 本作のヒロイン・エリザベスは(笑)、父が自分をほうっておいて海外に仕事に行くことから、自分は不幸のどん底にいるような気になるのですが、祖先のズィーは、もっと過酷な環境で歯を食いしばってがんばっていたということを知るのです。結果、エリザベスは強い女に成長します。

 さらに、朝倉かすみ「てらさふ」にあるように、「その年に起こった大事件をさりげなく、こう(混ぜ込む)」のであれば、やはり「集団的自衛権」に触れざるをえないでしょう(笑)。なにしろ本作、ズィーは戦争に巻き込まれても、「二度と自分のたいせつなものを奪われたりするものか」と誓う強い女です。自分の土地を守るために、最前線に加わり、射撃手のために弾込めをする女です。 集団的自衛権バリバリの闘う女です。そしてその結果、アメリカは独立戦争に勝つわけです。

 いやしかし、日本の国政が微妙なこの時期に、よくこんな本が課題図書に選定されたものです。読んでびっくりしました。

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