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2014/03/30

古野まほろ「背徳のぐるりよざ」感想

 母の妹たち、つまり叔母が私には3人いるのだが、それぞれ浜松、豊橋、岡崎に住んでいる。お盆のお墓参りに豊橋に寄った時には、叔母たちの話す三河弁をシャワーのようにたっぷりと浴びたものだった。三河弁の土着民っぽさは、それまで四国に住んでいた私にとっては、鮮烈だった。語尾に「~だら」とか「~だに」がつくものだから、最初聞いた時はびっくりしたものだ。

 ところが、小4から高3までの9年間、父の仕事の都合で、浜松市に住むことになった。遠州・三河の方言にどっぷり浸かって生活することになったのだ。

 叔母たちが「~だら」「~だに」を使うのはまあよしとしよう。むしろおばさんにはぴったりのイメージであるし。困ったのは同じクラスのちょっとかわいい女の子たちまでもが、ごく当たり前に「だら」「だに」を使うことだ。せっかくかわいい顔してるのに、百年の恋もいっぺんで冷めるぞ! とか思ったが、さすがにそれを口に出して言う勇気はなかった

 さて、本書の登場である。

 帯の惹句には「論理に隙なし。探偵女学校春期合宿殺人事件」とある。女子高生3人組の探偵さんが主人公の本作。そのうちの一人がなんと三河出身。表紙絵を見ると、大人が持つにはこっぱずかしいアニメ絵調の女子高生3人組が描かれていて、どうやらこの三河出身の少女は、黒髪お姫様カットに二連泣きぼくろ、切れ長な目を持つ、人形のように美しい女性であるらしいのだ。

 彼女たちの合宿研修旅行の行き先が三河の山奥で、そこの通訳係として、彼女が(本人の意にそぐわず)大活躍するのだが、これが読んでいて実に楽しい。以下少し抜粋しよう。

『バスとわやに違いがあるのかのん、ほい?(中略)あんた三河者だらあが。小娘七人も搬べんちゅうだかん?』

もちろん彼女はこの三河弁を発する前に『彼女は発話直前、鋭い視線を私達に突き刺したーーー嘲ったら殺す。』のだが・・・いや笑えるって。

 このギャップのおもしろさは、Perfumeの三人が、バリバリ最先端のパフォーマンスを演じた直後、突然広島弁丸出しでMCを繰り広げる光景に似ているかもしれない。いや、広島弁は「そじゃねー」とか「そうしんさい」とか、ほんわか和み系なのだが、三河弁は「わきゃないずらよ」「心配になってくるだらあ」であるので、やはり別の種類の落差、インパクトがある。

 本書のストーリーそのものは、「田舎の閉鎖社会」「正直族と嘘つき族」といった設定で、まさに推理小説の王道なのだが、過去の推理小説やアニメ(エヴァンゲリオンが多いような気が)からの引用がありまくって、何が何だかわからくなる時が多々ある。そこは読み流すしかないだろう。本書はしかし、そんな本格推理小説の謎解きや過去の作品の引用を楽しむのではなく、三河弁の楽しさを味わい尽くすのが、正しい読み方であろう。のんほい?

 ちなみに主な三河弁の注釈を以下に抜粋!

「こく=言う」「けどもが=だけど」「だもんで、もんだで=ですから」「~りん=命令形」「~まい=レッツ」「のん、ほい=ザッツイット+イズントイット」

 

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