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2014/01/19

林真理子「野心のすすめ」感想

 エッセイである。世の中に不平不満を言っているだけで、現状打破するためのアクションを起こさない若い人たちを見て、はがゆくなってくるらしい。状況を変えたければ、まず自分を変えろ。行動しろ。私はしたぞ。これだけのことをしたぞ。という内容である。

 成功した人の書いたことなんだから、当然この通りやれば皆成功する・・・かというと、そんなことはないと思う。成功までの過程にはいろんなパターンがあり、本書はそのたくさんのパターンのうちの一つ、くらいに考えて読むのがよいだろう。

 後、本人も

 「エッセイとはつまるところ、自慢話である」とはしばしば言われることですが、小説よりもエッセイのほうが、物書きは嘘を吐くと私は断言します。いくら本音を売りにしたエッセイであっても、小説のほうが遥かに正直な自分が出てしまう。

と書いている。だから本書が自慢話っぽく読めてしまうのは仕方ない。ぐっと耐えて読み進めるべし。

 個人的にツボにはまった部分をいくつか抜粋しよう。

◎ いろいろな理由が言われていますが、若い女性達が専業主婦志望とならざるをえなかった理由を考えた時に、私の脳内には、一つのイメージ映像が浮かんでくるのです。
 保育園の送り迎えでママチャリを必死に漕いでいる、働くお母さんたちの鬼気迫る姿を見て、若い子たちが「ああああ無理!」と思ってしまった結果ではないだろうか、と。
 子供を持って働くと避けられない、なりふりなど構っていられない余裕のなさを、多くの若者があちこちで見知ってしまったからではないでしょうか。

・・・私の職場で働く母親たちも、まさにこんなイメージだ。それを横目で見ているから、だからいつまでも結婚しない「アラサー仕事のバリバリ出来る女子」が増えているのだろうか?

◎ 本当に恐ろしいのは「止まっている不幸」だと思います。出口が無くて、暗く沈んでくだけのモヤモヤとした不幸。
 望んでいた仕事に就けず、無力感のまま働く若い人が、資格を取るとか転職しようという努力も何もせず「こんなはずじゃなかった」と社会を恨むことしかしない。
 子供を育て上げた専業主婦が生き甲斐を失い、「夫と子供に捧げただけの不幸な人生だった」と口にする。それも世の中のせい、男性社会のせいで不幸になったと、なぜか自分の不幸を社会制度と結びつけて愚痴を言ったりする。意地悪な私は「夫選びを間違えたのは誰ですか、結婚したいと願っていたのはだれですか」と詰問したくなっていまいます。
 自分が何を欲しているかわからないまま「こんなはずじゃなかった」と世の中を呪う寂しさほど惨めなことはありません。自分の欲望さえ把握できない人たちは、何を目指して努力したらいいのかさえ見当がつかない。

・・・自分が一番欲しい物は何なのか? それがわからない人は一生不幸な人生を送るという論。過去にいろんな作家が手を変え品を変え述べてきた、ごく当たり前のことだが、林真理子の場合は「詰問したくなってしまいます」のあたりが恐ろしい(笑)。 

◎ では、「なんだかつまらない」のに、いくら考えても、自分が何をしたいのかわからない時はどうするか。
「何をしたいのかさえわからない、自分の至らなさ」をまずは自覚することです。

・・・死者にむち打つような、情け容赦ない攻撃! さすが成功した人は言うことが違う! 

 中学生の進路指導にも使えそうな気がしてきた(笑)。

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