近藤滋「波紋と螺旋とフィボナッチ」感想
「これ知ってる? 農協で時々売ってるんだけど、昨日見たらたまたまあったから買ってきたの」そう言って職場の上司(女性)に見せられたのが、奇妙な野菜ロマネスコ。カリフラワーのようなのだが、丸くない。三角錐が螺旋状にいくつも積み重なってできている。つんつんドリルがとがっている。そのドリルの中に小さなドリルがあり、その中にさらに小さなドリルが・・・。
神がこのようにデザインしたとしか思えない、あまりに出来過ぎた造型である。
「よかったら売ってあげるわよ」との言葉に甘え、買って帰って妻に見せると、「これはデパ地下で売ってる高級食材だわ。え、たったの160円? 安い!!」と、なぜか値段のほうに驚いていた。そっちじゃないだろ!
ネットで調べると「悪魔の野菜」とかいう、とんでもない別名があったりして、なおさら驚いた。
さて、本書はその不思議な造型を、別に神や悪魔が施したわけではなく、ある数学的なルールに従って成長すると自然とそのような形になってしまうのだということを、理系の人間に、数式や参考にすべきウェブなどをまじえ、わかりやすく述べてくれている。
文系の人間は・・・すいません。むずかしい数式のところは読み飛ばしてください。それでも十分に笑えますから(特にライオンがシマウマを発見した時のリアクションのあたり)。
最終章では、筆者がこの発見をするに至る過程がノンフィクションで描かれており、理系の大学を目指す生徒は必読と言える。そうか、大学の研究室って、こういうシステムになっているのか。教授の新発見のための働きアリとなって必死に働くのが、理系大学院生の定めなのか。そんな中で、教授の実験とは別に自分オリジナルの発見をしようとしたら、こんなに冷や汗かくんだ・・・みたいな感じなのである。
理系男子のもてなさぶり描写もリアルで、ちょっと切なかったりする一冊だ。
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