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2013/12/07

いとうせいこう「想像ラジオ」感想

 第149回芥川賞候補になったものの、受賞したのは藤野香織の「爪と目」のほう。でも斬新な手法で書かれていて、話題になった作品です。

 ずばり直球で東日本大震災をテーマに扱っています。初版は2013年3月11日だったりします。

 第一章、第三章、第五章は、津波で杉の木のてっぺんにあおむけにひっかかったまま死んでしまった38歳中年男が、DJアークを名乗り、全国にラジオ番組を送り届けるという章。間に挟まる第二章、第四章は、現実世界に生きる中年作家が、周囲の人たちとの関わりの中から、想像ラジオとつながりを持つ章。
 奇数章で描かれるラジオの放送内容は、すべて想像。つまりこれは死者からの一方通行なわけです。
 死者が、いくらこっちの世界にメッセージを発していたとしても、我々はそれをキャッチすることはできません。そもそも、「死者がメッセージを発している」という本作の現象は、実は生きている側が勝手に「死者がメッセージを発している」と想像しているにすぎないのです。つまり生きている人の頭の中だけにある世界なわけです。だから、正確には、生きている者から死んでしまった者への、一方通行的メッセージなわけです。
 しかし本作では、徐々にその一方通行が双方向通行へと変化していく。奇数章の世界と、偶数章の世界の関わりが深まっていく。その過程が静かな感動を呼びます。

 お墓は何のために必要か、というテーマと通じるものがあるように感じました。死者を弔うため、というよりはむしろ、生き残った者が、死者を思い返すために必要なのだという説に、強く共感した覚えがあります。「想像ラジオ」も同じ。生きている者が、亡くなった人たちを思う、そのために必要なのが「想像力」なのではないか。

 震災で亡くなった人たちのことを忘れて、次のステップに進もうとしている人たちに向かって、「忘れるな、想像しろ」強いメッセージを発している、そんな作品と感じました。  

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