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2013/12/21

DVD[ル・コルビジュエの家」感想

 オープニング。突然、隣家の住人がこちらに向けて、新しい窓を作り出す。ハンマーでぼっこんぼっこん穴を開けていくシーンで始まる。
 どうやらあちらの国では、隣家の窓と向かい合わせの窓を作るのは法律違反らしい。知らなかった。プライバシー保護のためですか? 日本にもそんな法律あるのかな?
 主人公はイスのデザインで成功を収めてリッチな生活を送っている。リッチさの象徴が「ル・コルビュジエ設計の家に住んでいる」ことなのだ。
 ル・コルビュジエは、建築関係者の間では神様扱いされているお方で、私も以前民放の美術番組で「モジュロ-ル兄弟」という全身黒タイツキャラが紹介してくれたのを観た覚えがある。まあ、はっきり言って日本の一般民間人には縁のない建築である。ウサギ小屋生活が当たり前の日本人には、あんなに無駄な空間(失礼、芸術的な空間)、絶対とれませんって。そもそもあの空間、誰が掃除するんだ?(映画ではちゃんと家政婦さんが電気掃除機をていねいにかけていました・・・)
 で、本作の主人公、はっきり言って嫌なヤツである。若手の女性デザイナーが持ち込んできた作品を、あれがダメこれがダメと批評する。そこはいいだろう。だが、そのあと、彼女に性的関係を迫ろうとする。そんな困ったヤツなのである。どうやら妻とはうまくいっていなくて欲求不満に陥っているということらしい。さらに、娘とも会話が成立しない。主人公が娘に話しかける時、娘はいつもヘッドフォンを耳穴に押し込んで、ダンスの練習をしているのだ。親父と会話したくないオーラを出しまくっているのだ。そもそも本作に登場する妻と娘、全然魅力的に描かれていない。こんな妻の、こんな娘の一体どこがいいんだ? そう思わせるキャスティングを監督はしている(ついでに言うと、先ほどの女性デザイナーも、まったく魅力的でない)。
 つまり、社会的には成功しているが、女達に、まったく相手にされない中年男。しかもその女達は、残念なことに、性格的にも外見的にもまったく魅力的でない。まったく魅力のない女性に、いいように振り回される、その程度の人間、それが本作の主人公だ。
 妻には「あの窓をなんとかして。隣人に交渉して窓を塞いでもらって」とせっつかれるが、この隣人、実にパワフルな男で、主人公は押されっぱなし。妻と隣人の間で右往左往する優柔不断っぷりが見ていて実に情けない。そもそも、窓を塞ぐためのあの手この手が、実に卑怯と言うか何と言うか・・・情けないのだ。
 で、一見あぶないヤツとして描かれる隣人だが、丁寧に言動を見ていくと、きわめて真っ正直な人間であることに気がつく。

 「社会的には成功しているが、さえない優柔不断男」 対 「外見や言動はあぶないが、実は正直でしかも行動力のある隣のおっさん」という二人のキャラの対比で本作は描かれる。
 前半、たいていの人は主人公側に肩入れして観ると思うのだが、中盤過ぎた辺りで、主人公のダメダメっぷりが徐々にわかりだし、逆に隣人のヴァイタイリティに慣れてくる。そうなると、終盤はもう完全に逆転して、主人公に向けて「いかげんにしろ」と心のなかで罵声を浴びせるようになるだろう。そして「隣のおっさんがんばれ」と応援してしまう自分を発見することになる。ところが・・・

・・・ラストは意外な展開で、観るものはあっけにとられる。え! そんなシニカルな終わり方するのか!
 なかなか邦画では味わえない雰囲気の映画である。たまにはこんな映画もいかが?  

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