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2013/11/10

吉本ばなな「さきちゃんたちの夜」感想

 久しぶりに吉本ばななを読んだが、やはり違う。他の作家とは何かが違う。独特の空気感が感じられる。
 六人のさきちゃんたちの短編集である。それぞれに登場するさきちゃんは、みな漢字が違う。早紀ちゃん、紗季ちゃん、咲ちゃん、沙季ちゃん、さきちゃん・・・。彼女たちには、根底に非常にニュートラルな考え方があるので、他人から頼りにされるらしくいろいろな無理難題が持ち込まれるのだが、そうなっても彼女たちの言動には、ぶれがまったくない。そういうところが凄い。
 持ち込まれる無理難題は、例えば、行方不明の友人の安否確認。勝手に葬儀を済ませた伯母の遺品の後始末。亡き祖父母が無料でご近所にふるまっていた豆スープの復活依頼。母に恋人ができたので家出してきた少女の相手。などなど。

 伯母が、自分の死後、葬儀を済ませてからそれを親族に伝えるよう隣人に依頼する。いきなり伯母の骨が送られてきたことに対し、母が怒る。「勝手にこんな風に葬儀をすませるなんて、鬼みたいな仕打ちだ」さきちゃんから見れば、鬼のようなのは、母のほう、と吉本ばななは書くのだ。

 当事者から見れば、実の姉でもあり、生前並々ならぬ深い関わりがあったのに無視されたわけだから、腹も立つだろう。世間では、残された者の「きちんとお別れがしたい」という感情の持っていき場のためにも、生前お世話になった方たちへの挨拶の場としても、葬儀は普通に行うべきだという意見が根強いという。

 だが、一歩離れた所から伯母の立場や心情もあわせて見れば、さきちゃんのような感想にもなる。

 こういった、世界を一歩離れたところからすっと俯瞰するような見方は、好き嫌いがあると思う。他人目線ではなく、もっと当事者の立場に立ってみろと。だが、吉本ばななは、同時にいろんな立場に立ててしまう人なのではないだろうか。いろんな人の立場が瞬時に想像できてしまうからこそ、こういう小説になってしまうのではなかろうか。無理やりどちらかを押し通すようなことを言うのはやめようと。できるだけたくさんの人の思いをくみ取ろうと。

ニュートラル、私は好きだ。 

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