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2013/11/17

映画「かぐや姫の物語」感想

 試写会を見てきたので、ネタバレにならぬ程度で感想を述べることにする。

 本作、おそらく賛否両論出ることであろうと思われる。

 原作を読んだことがある方なら、かぐや姫は「前世の約束」で月から地上にやってきたことはご存知であろう。月から姫をお迎えに来た天人が、地上の食べ物を「けがれております」などと発言する場面もあり、月の都の人にとって、地上はけがれた世界である、そういう設定として描かれている。

 以上のことから、かぐや姫は月の都で何かしら罪を犯し、罰として6年以上(成長するのに3か月、求婚者達のエピソードで3年、帝とメル友になってから月に帰るまでに3年)地上での生活を命じられた、いわば島流し状態であったと考えるのが自然だ。さらに、翁がたびたび竹の中から黄金を見つけたり(養育費)、月からのお迎えの人数がものものしかったりすることから(組長が刑務所から出所するシーンではあるまいに)、かぐや姫は、月の都ではかなりの地位にいる方であろうことは、容易に想像できる。

 さて、今回の映画、ポスターには「姫の犯した罪と罰」とキャッチコピーがあるから、当然見る方としては、前述した、月の都で姫が犯した罪が語られるのではないかと考えるのが自然な流れだ。

 しかし、本作には、そのようなエピソードが描かることは一切ない。本作で描かれるのは現世での姫の罪と罰なのだ。

 予告編を見たときから、不安は感じていた。屋敷の扉を蹴破り、十二単を次々と都の大路に脱ぎ捨てて竹林へと走り続けるシーン。本作のかぐや姫は、まさしくそういうキャラとして描かれている。自分の行動が、結果的に周囲の人々にどれほどの迷惑をかけるかという所まで、考えが及ばず、「自分は男の人に都合の良いお人形様なんかじゃない」的な感情のままに突っ走るのだ。姫の、一人の女性としての自我を描こうという意図はわかる。だが、おかげで本作はたくさんの登場人物たちが、悲しい思いをすることに・・・。これが本作で描かれた「姫の罪」なのだ。

 原作のかぐや姫は、翁の立場をおもんぱかり、帝と文のやりとりをするくらいの思慮深さを持っていたのだが・・・。

 というわけで、本作のかぐや姫のこのような性格設定には、おそらく賛否両論おおいに出るところであろうと思われるのだ。

 さて、帝である。原作でも無理矢理かぐや姫に抱きつこうとするシーンがあるのだが、本作でもそれは忠実に描かれている。さらに「私に抱かれた女は皆幸せになるのだ」的発言もあり、誰が見ても超自己中のセクハラ、パワハラ男である。

 だが、平安時代は帝と言えば、天孫であり、このシーンは宇宙人「かぐや姫」VS地上の神「帝」という構図と考えてよかろう。当時の作者も、天孫には敬意を表していたのだろう。「姫は帝に不老不死の薬を贈る」など、それなりのエピソードをラストに持ってきている。

 ところが本作には、その天孫たる帝への敬意が、これっぽっちも描かれていない。セクハラパワハラ男のまんまなのである。いやまあ、確かに今は平安じゃなくて平成ですから。でもここまで原作無視しちゃっていいのか? ここまで帝を無視しちゃっていいのか? これって本当に「かぐや姫」?

 ラストの、月からお迎えがくるシーンは、バックに流れる音楽もあわせて、物議を醸しそうである。だが、ここまではじけた演出をしてくるとは思ってなかったので、私はお口あんぐり状態で見てしまった。いや、びっくり! おもしろかった!

 それからかぐや姫お付きの女官、すごくキャラが立っていて、笑わせてくれた。

 芸術的な面から見ると、本作はどう評価されるのだろう? 淡いにじみとぼかしと余白を多用した水彩タッチの動画は、斬新なような気もするが、どこかのテレビゲームが既にやっていたような気も・・・。

 音楽は久石譲。平安時代の絵に、ずんずんフルオーケストラの分厚い音楽をかぶせてくる。和楽器メインで攻めるのかと思っていたのだが、音の響きは明らかに19世紀以後のヨーロッパ風クラシック音楽のもの。すごく違和感を感じた。

 誰か、もっと原作に忠実な「かぐや姫」を撮ってくれないかなあ。

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