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2013/11/24

奥田英朗「沈黙の町で」感想

 あの、エンタテイメント小説の名手である奥田英朗が、なんと中学校のいじめを題材に小説を書いたのである。
 いじめ防止法案が出たこともあり、いじめた側に対して、出来うる限りの強い対応を学校現場に求められることになった。だが、本書にあるように、中学校教員は、いじめられた子どもの保護者と、いじめた側の保護者との間で板挟みになる。そんな時の対応として、また危機管理対策として、本書はフィクションではあるが、まさに学校教職員必読の書と言えよう。
 多人数視点で書かれており、読者は、主人公の視点が変わる度に、生徒の立場にも立つし、保護者の立場にも、遺族の立場にも、警察の立場にも、新聞記者の立場にも、教員の立場にも立つことになる。
 視点が変わることによって、一つの事件の背景に何があったか、見えてくる世界がまるで変わってくる。

 そして驚くほどにリアルだ。いざいじめ事件が発覚した時、保護者が、我が子可愛さのあまり、自分の子ども以外の事象がまったく見えなくなるあたりの描写や、中学生たちが徐々に深みにはまっていくのを、自分たちで止められなくなるあたり、本当にどこの中学校でもおこりそうなリアルさがあり、だから実に怖ろしい。
 はっきりいって視点が多すぎる感は否めない。中には出番があまりに少ないお方もおり、深まりが足りないと感じたりもする。だが、この多視点ドラマという形は、まさしく奥田英朗の腕の見せ所だ。一歩突き放した視線で、感情移入せず、冷静あるいは斜に構えたポジションでの語り口は、まさしく「インザプール」から続く奥田流の流れだ。おかげで読者は、クールに冷静に、状況を俯瞰することができる。

 下手なホラー小説そこのけの怖さ!!!

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