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2013/10/27

佐藤健太郎「炭素文明論」感想

 我々にとって最も重要な元素、それが炭素だ。という前書きで始まる。目次を見るとほとんど人類の歴史だったりする。

第1章 文明社会を作った物質 デンプン
第2章 人類が落ちた甘い罠 砂糖
第3章 大航海時代を生んだ香り 芳香族化合物
第4章 世界を二分した「うま味」論争 グルタミン酸
第5章 世界を制した合法ドラッグ ニコチン
第6章 歴史を興奮させた物質 カフェイン
第7章 「天才物質」は存在するか 尿酸
第8章 人類最大の友となった物質 エタノール
第9章 王朝を吹き飛ばした物質 ニトロ
第10章  空気から生まれたパンと爆薬 アンモニア
第11章  史上最強のエネルギー 石油
第12章  炭素が握る人類の未来

と、こんな感じである。
 砂糖を手に入れるためにこんな戦争が・・・とか、香辛料やカフェインやアヘンをめぐってこんな戦争が・・・とかが繰り返し語られるのだ。第11章はもちろん石油をめぐっての世界大戦の話に。
 いずれの物質も、中心となる元素は炭素だ。ところがこの本によると、地表上に存在する元素のうち炭素は重量比でわずか0.08%を占めるに過ぎないとか。チタンより少ないってホントか?
 とにかく第1章から読ませる。過去の歴史を調べると、大乱が起きるのは決まって食糧難=気候変動(冷涼多雨)の時代だと。主君の暴政がきっかけでおこった大乱は数えるほどしかないと。言われてみれば「項羽と劉邦」なんかその典型だった。食を保証した劉邦が最終的に勝者となっているではないか。

 理系の人なのに、論の展開がうまい。特に第11章から第12章前半で、とことん近未来のエネルギーについての不安材料を並べ、読者を不安のどん底にたたき込んでおきながら、最後第12章後半でちょっとだけ希望の光を見せて終わる当たり、立派なSF小説であると言えよう。
 化学の本だけど、文系が読んでも楽しめる。特に過去の戦争の原因が知りたい人、SF小説のネタを仕入れたい人にはお薦めだ。

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