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2013/07/27

高野史緒「カラマーゾフの妹」感想

 

元ネタの「カラマーゾフの兄弟」は、ドストエフスキーが続編を書く気満々でいたらしいのに、果たせなかった名作。おかげで、あちこちに張られている伏線がどう回収されていくのかわからずじまい。きっとロシア革命につながっていくんだろうなという予感だけは読者のほとんどが感じたであろう、つまり当時のロシアとしては、おそらくとんでもない問題作。ところが今回、それを高野史緒が大胆な解釈で完成させたとのが本作。ただし、どんな解釈かというと、ちょっと不自然な性格設定の登場人物は、皆なんらかの性格異常者であるというサイコチックなもの。おかげで、びっくりはするんだけど、読後感はなんだか後味悪いものとなりました。例えば天使アリョーシャ。実は身体障害者偏愛の変態野郎かつとんでもない自己中野郎だったという解釈には目が点に。まあ、確かに言われてみりゃあ、彼にはそういう雰囲気もありました。天使と自己中変態って、確かに紙一重なのかもしれません。ただやっぱり、こういう解釈は、アリョーシャを応援していた一読者としては、かなりショックです。
 兄のイワンが実は多重人格者という解釈の方は、これはまあ納得できる範囲内。ただ、イワンの大審問官がいつ出てくるのかと、期待しながら読んでたのに、残念ながら空振りでした。
 タイトルの「妹」は、中盤に一瞬出たと思ったら病死。でもそれがカラマーゾフ兄弟のトラウマとなるという所が本作の肝。そのトラウマが、兄弟が性格異常者になっていったきっかけということらしいのです。
 中盤は一時的に、なんだかSFっぽい展開になるので、そっち系に拒絶反応を持つ人は、本作は受け入れがたいのではないでしょうか。
 ロケット発射の結末は、まあ、あんなもんでしょう。ロシアもアメリカも、何度も実験やって失敗繰り返して、飛行士たくさん事故死させて、そうやってやっと実用化に至ってますから。
 ところで電卓計算天才少女はどうなっちゃったのかな? おもしろそうなキャラだったので、出番があれだけで終わってしまうと、読者としてはちょっと消化不良気味なんですけど。

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