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2013/06/29

村中李衣「チャーシューの月」感想

 平成25年度読書感想文中学校の部の課題図書です。
 タイトルがまず???です。
 養護施設が舞台。そこに入所させられる女の子、明希というんですが、父親と別れる直前にラーメン屋でチャーシューメンを食べるのです。丼に浮かんだチャーシューを見て「外のお月様が浮かんでる」と言うのですね。いや~、言うかな? チャーシューって、月に見えますか? ゆで卵なら月に見えますが。
 困ったことに、この「月」が、後半で大切な象徴として登場するのです。そんな大事なものなんだったら、チャーシューじゃなくて、もっと別の明るく丸いものを象徴として使ってほしかったかなあ。

 さてこの明希、サヴァン症候群のようです。映画「レインマン」で有名になりましたね。電話帳を一瞬見ただけで、すべて記憶してしまう自閉症の兄の話。
 人間は、左の側頭葉前部の、言語処理に関する領域が損傷すると、サヴァン能力を持つ自閉症になると言われています。左脳の能力が低下した場合、それを補うために右脳が働く。この時、右脳と左脳のバランスが崩れて、右脳が潜在的に持っている能力が暴走し始める。それがサヴァン能力であると言うのです。
 たとえば、カードゲームで、場に出たカードを全部記憶し、瞬時に確率計算し、有利にゲームを進める。花火など一瞬の映像を高速シャッターで映したように記憶し、そのまま絵に描く(画伯山下清がこのタイプ)。開いた本のページをまるごとイメージとして覚え、あとからゆっくりと思い出して読む。このように、サヴァン能力の持ち主は、見たものを瞬時に記憶に残す能力を持つのですが、代わりに人の心を読みとる・推し量る能力に欠けます。その場の雰囲気がつかめない。従って人とのコミュニケーションがうまくとれない。結果、自我の形成に大きな支障が出るようです。

 明希もそうだとすると、高機能自閉症である確率が高い、つまり空気読めない少女であろうと思われます。生育環境が作中で述べられるのですが、ことあるごとに明希が「ごめんなさい とうちゃん もうしません ごめんなさい」と繰り返すあたり、父親による家庭内暴力(DV)に日常的にさらされていたようで、それが彼女の左脳の発達を妨げたのかもしれません。
 明希は養護施設で、周りの空気が読めない言動をいくつもして、いじめられます。主人公の美香は、そんな明希が気になって、いろいろ面倒を見るようになります。結果美香はちょっと成長する。いちおうそんな小説となっております。
 
 ただ本作、明希が、見たものを記憶する時に「かしゃ」「かしゃ」と口でシャッター音を発生させるのです。これはかなり不自然。おそらくサヴァン症候群の人は無言で記憶すると思います。本作のように自分で自分をカメラに喩える理由がよくわかりません。筆者はどういうつもりでこんな書き方をしたんでしょうか?
 それに、本当の高機能自閉症なら、自分独自の世界の中で生きていくはずです。幸せの定義もわれわれとは違うはず。明希のように他者との関わりを持とうとすることは滅多にないのでは? ここらあたり、いかにも作り話っぽいです。

 養護施設にいる子どもたちの親は、DV率が高いようです。本作では、明希が妙な歌を覚えています。
「おとこがまわたのようにやさしいと、おんなはだまされてついていく。ほれもやがて、なみだにくれるときがくる。ぬれたまわたは、おもくなる。だまされたのにきづいたときは、わたがおもくてにげられん。」
 養護施設の子どもたちが全国で3万人もいるなどと本書後書きに書いてあるのですが、それって、ほいほいだまされるおんながたくさんいるからだと、そういうことを筆者は言いたいんでしょうか?
 逆に言えば、こういう無責任な男があまりに多いから、賢い女は結婚しようとしないんでしょうかね? 賢い女は子供を作らず、だまされる女ばっかりが、子どもをどんどん産んで、悲惨な境遇の子どもが増えていく。だとしたら、今後の日本の子どもたちは、その大半がDV環境の中で育つことになりそうです。この負の連鎖、どこかで断ち切る方法はないものでしょうか? 
 本作を読んでも、残念ながらその答えは見つかりません。

 本作でリアルなのは、養護施設内での子どもたちのヒエラルキーの存在です。年下の子が年上の顔色を見て毎日を暮らす様子が、実にリアルに描かれています。いじめだらけです。「いじめたくなる気持ちも分かる」みたいなことを主人公が言ったりするぐらいです。「いじめは絶対ダメ」と唱えている人は、こういう施設でどうしたら子どもたちのいじめを根絶できるか、その対策を真剣に考えなければならないでしょう。

 問題提起がやたらと多い小説で、解決方法は示されていないので、読者は暗い気持ちにならざるを得ません。これを読んだ子どもたちに一体どうしろと? 子どもには、どうにもできないでしょう? 問題は親にあるのですから、結婚適齢期に入った男女に書かせないと効果ない! 子どもを作ることになる前に読ませないと! あ、だから中学生なのか? 色気づき始めた女子中学生に読ませて「わたしは、ばかな男に騙されないよう賢く生きていきたいです。やさしい言葉や愛してるといった甘い言葉の裏に何があるか、しっかり見極めて、私や子どもを殴ったりしない、責任感のあるきちんとした人と結婚するようにしたいです」みたいな感想文を書いてほしいのでしょうかね?
 「愛」という一時の情熱に突き動かされて結婚したのはいいが、やがて熱が冷めるにつれ配偶者間の暴力が発生し、結果不幸な子どもが3万人生まれる。恋愛結婚が主流になったからこそ、このパターンが増えたということでしょうか? だとすると本書が提起する問題、敵は恋愛感情ということになりそうです。だとしたら、こいつは強敵です。一度恋愛感情が発生したら、どんな人も冷静に自己分析できないと言われていますから。

 そもそも本作、小説と言うよりは、小説のふりしたドキュメンタリーみたいな作品です。小説としては、冒頭に書いたように、大事な象徴がなんだか・・・。チャーシューって・・・。
 そういう小説的手法はばっさり切り捨てて、「実態!日本の養護施設に子を預けるのはこんな親だ!」「陰惨! 養護施設内に実在する上下階級」みたいなドキュメンタリーで書いたんなら納得。  表紙絵も内容にふさわしく、とことん暗いです。

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コメント

despair「かしゃっ」っていうのは、思い出す時に言う言葉だと思います......それと、筆者さんの伝えたいことがまるで伝わっていないようなので、もう一度別の視点で読んでみて下さい......突然すみませんでした。

投稿: 厨ニ | 2013/09/01 23:12

感想文nowです!!

↑これからのことは参考に
させていただきます!

ありがとうございましたhappy01

投稿: 優愛 | 2013/08/15 22:41

うち、中2やけど、
感想、長すぎてようわからんかったsweat02
でもまあ参考にしてみますわぁ( ̄▽ ̄)
ほな、おおきになあcatface

投稿: NOR | 2013/07/27 10:43

中学生です。暗い内容なんですかーcoldsweats02
これにしようと思ってるんですがね…。
(^-^;
まあ、一応読んでみます。
ヽ(´▽`)/
感想、参考にさせていただきます。
ありがとうございましたheart04

投稿: あやめん | 2013/07/26 23:48

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