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2013/06/16

モーリス・グライツマン「フェリックスとゼルダ」感想

 時代は第二次世界大戦。ユダヤ人の子どもが、ナチスによって強制収容所送りになる所を、どうやって生き延びたかが語られるフィクション
 主人公フェリックスは、10歳。脳天気な性格で、何でも自分に都合よく解釈します。都合の悪いことはなるべく考えない。だから、ナチスがユダヤ人を差別し、まとめて処刑しようとしているという事に、おそらく気づいているはずなのに、気づかないふりをします。「ナチスは僕達の本を処分しようとしているだけなんだよね」いや違います。早く気づけよ。真剣に逃げないと間違いなく死ぬぞ。読む方はナチスによるユダヤ人迫害の歴史をある程度知っているので、はらはらどきどきしながら読むわけです。
 フェリックスのようなポジティブシンキングには、一長一短があるでしょう。
 例えば短所、自分に都合の悪いことを見ようとしないから、いざという時、危機回避が遅れる。本作では、フェリックスは何度も危険な瞬間を迎えるのですが、その都度、奇跡的な何かがあって、助かります。まあフィクションですから、都合よく誰かが助けてくれたりするわけです。
  長所は、何でも前向きに考えるから、どんなにつらいことがあってもくじけない。へこたれない。どう考えても両親とっくに死んでるだろという状況なのですが、フェリックスはきっと二人に会えると信じ、強く生き続けます。このあたりは、本の帯にも惹句として書いてあるので、出版社としては本作のセールスポイントなんでしょう。

 しかし、本作の本当のセールスポイントはおそらく、ゼルダという幼い少女と行動をともにする所なのだろうと思います。だってタイトルに「ゼルダ」が入ってるじゃないですか。で、彼女は「そんなことも知らないの」的高飛車な物言いをするキャラとして描かれます。ひょっとしてツンデレ系? 著者のモーリスさんは日本のサブカルに詳しい?
 ただ筆者は、ゼルダの容姿について一切描写していません。ですからここは勝手にちょっと目力のきつめな美少女と想像しておきましょう。エヴァンゲリオンのアスカを 6歳くらいにしたみたいな感じかな?
  フェリックス一人だと、おそらく楽観的な性格が禍し、どこかでミスをして、収容所送りになったと思います。ちょっと生意気な、でも一人では生きていけない、か弱い美少女ゼルダを守りたい。彼女を守ることができるのは僕だけだ。そういう思い込みが、脳天気なフェリックスに、冷静かつ慎重な行動を取らせたのでしょう。最後は自分たちの状況を的確に判断し、究極の二択の選択肢の中から賢明なほうを選びとります。
 結果的に二人は、収容所送りの運命から逃れることができるのですね。
 なんでも続編があるそうで、それもあと三つも。二人が成長してどんな関係になっていくのか、ちょっとどきどきです。

 本作は、今年の夏の読書感想文中学生の部の課題図書です。人種差別はいけないとか、どんな時も前向きに考えることが大事だとか、そんなありきたりな感想ではない感想文を、中学生たちがどれほど書けるか、今から楽しみです。
 

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