« DVD「桐島、部活やめるってよ」感想 | トップページ | DVD「レッドステイト」感想 »

2013/06/02

伊坂幸太郎「ガソリン生活」感想

 緑のデミオ、略して緑デミ(みどでみ)が主人公(主車公?)の小説です。
 というわけで、自動車が擬人化されて描かれます。しゃべるし(ただし、会話が成立するのは自動車相手の時のみ。相手が自転車になると、とたんに会話が不成立。人が相手の時は、聞くことのみ可能で、話しかけることは不可能)、ワイパー(眉毛?)動いちゃうし、開いたボンネット(口?)がふさがらなくなるし。幼稚園のころに好きだった絵本「青い自動車」(青いスージーの話です)を思い出しました。最近だと「カーズ」かな?
 緑デミは、持ち主とその家族が彼に乗っている間の会話しか聞けないわけです。ここが本作のポイント。読者は彼らが車から降りた後、どんなドラマに遭遇しているのかを想像しなければなりません。楽しかったです。
 私の職場の駐車場にも、紺デミと赤デミがいるのですが、これ読んだ後だと、つい「よう、元気?」とか、声かけちゃいそうで、自分がこわいです。

 で、本当の主人公は小学生。10歳の男の子です。小学生のくせにやたらと博識で、考え方も大人。言うことがあまりに小憎らしいので、学校ではいじめにあっているらしいのですね。大学生の兄よりもしっかりしているので、事件を見事に解決してくれるのは彼しかいないと読者の期待もどんどん高まります。
 ただ、彼の趣味はガンダムのプラモでジオラマを作ること。冒頭での兄との会話が「お前昔アッガイかっこ悪いって言ってなかったか」「あの時は子どもだったからよさがわからなかったんだよ、アッガイすっげえいいよ」みたいな感じなんですが・・・アッガイのデザインは、一般的なかっこよさとはほど遠いものです。色も思い切り地味です。小学生でそのよさがわかるとしたら、相当早熟だと言えます・・・いや笑えます。
 さらに「赤い彗星のシャア」ネタも会話の中に登場。ザビ家とダイクン家の確執が語られます。その上「2度もぶったね、望月家の人にもぶたれたことないのに」等々、本作はファーストガンダムに詳しければ詳しいほど楽しめます。
 最近テレビで、ガンダム関連のカードゲームCMがシリーズ化され、毎回楽しく見ていますが、今って再びガンダムブームなんでしょうか?  (いやずっとだろ)
 本作、ただのエンタテイメントかと思えば、いかにも伊坂幸太郎っぽい、人間についての考察が語られたりします。「人間には、認められたい、役立ちたい、褒められたい、という三大欲求があるらしい。だから、金があれば働かないかといえばそんなことはない。誰だって、役立ちたい気持ちはある。それが満たされなければ、幸福にはなれない」
 中学校では、将来の職業を考える授業があるのですが、その時に学習する職業三要素に一部似ています。職業を決める三つの条件です。
 その1 経済性 その仕事をすることによって経済的に自立できる。
 その2 社会性 その仕事をすることによって何がしか社会に貢献している。
 その3 個人性 その仕事が楽しい。あるいは自分の個性や特技を活かすことができる仕事である。

 なお、主人公が関わることになる女優さんの名前は碧(みどり)。主車公のデミオの色も緑。さらにラストでもう一人「みどり」が出てきます。
 碧さん関連の事件は、3分の2ほど読み進めたところで、無事解決します。残り3分の1は、小学生の弟が、友人のいじめ事件を見事に解決する話。相手の脅しを逆手にとって、逆に脅すわけですね。現実のいじめも、こんな風にうまく解決できるといいなあ。

|

« DVD「桐島、部活やめるってよ」感想 | トップページ | DVD「レッドステイト」感想 »

コメント

読んでいて期待以上に面白かったです。
伏線がキレイに回収されて輪が閉じる感じで、軽快に楽しめました。
エピローグには驚いて、ほんと心が温まりました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

投稿: 藍色 | 2015/09/18 17:21

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49249/57512098

この記事へのトラックバック一覧です: 伊坂幸太郎「ガソリン生活」感想:

« DVD「桐島、部活やめるってよ」感想 | トップページ | DVD「レッドステイト」感想 »