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2013/06/09

DVD「レッドステイト」感想

 レッドステイト、直訳すると赤い州。アメリカ合衆国共和党支持者の多い州。ライフル銃愛好家とキリスト教原理主義者(同性愛者に「地獄へ墜ちろ」と言ったり、「進化論なんてありえない。この世は神が作ったのよ」って言ったり、「中絶はどんな事情があっても神が許しません」と言ったり・・・)が多い州だそうです。日本人にはピンときません。が、本作を見れば、なるほど、そういう土地なのか。いやでも本当に? 本作、どこまでリアルでどこからが現実のデフォルメなのか、私にはちょっとわかりません。とにかく、あまりの異世界っぷり、常識の通じなさっぷりに、ゾクゾクしっぱなしの88分でした。

 まず、ざっとあらすじだけ述べます。
 アメリカ片田舎の男子高校生3人組。ネットで知り合った中年女性と一夜を楽しもうとする。だが実はそれはワナ。中年女性は狂信的なキリスト原理主義信者。彼女の属す教団は、ゲイのみならず、女遊びにうつつを抜かす輩にも神の罰を下すべしとばかり、三人の高校生を処刑しようとする。そこへ、教団が大量の武器を不法に所持しているとの確証を得た武器不法所持取締局(ATF)が捜索にやってくる。家宅捜索させてなるものかと、教団側が発砲、こうしてド派手な銃撃戦が始まる・・・というもの。
 銃撃戦が進むにつれ、教団の内部分裂が始まるあたり、実にリアルです。神に召されることを信じ、死を恐れず銃を撃ち続ける教団幹部たち。一方、銃撃戦により次々に死んでいく教団信者たちを目の当たりにして、いかにしてこの修羅場から子供たちを逃がすかを画策する女性信者。神の救いなんか、まったく当てにしてません。日本人的感覚からすれば、彼女が一番まっとうな感覚の持ち主なんでしょうが、「だってまだ子供なのよ」というセリフに対しては、「子供は未来があるから殺したらダメで、エロ高校生や中年オヤジはたいした未来もないだろうから殺してもいいのか? 年齢によって命の重みに違いがあるのか?」という疑問がよぎるような演出がなされます。
 彼女のその後の運命も実にリアル。
 一方、ATF局長は上司から全員射殺の命令を受け、「なんだって、女子供もいるんだぞ・・・。でも、命令に従わないと・・・」と、大きなメタボ腹抱えて葛藤します。これもリアル。
 最初、主人公は最初に捕まった高校生だとばかり思って見てました。でも、途中であっさり・・・。そもそも本作、主人公らしい主人公はいません。教団の幹部が主人公ともとれるし、ATF局長が主人公ともとれる。
 エンディングも予測不能。いきなり!?!?!?な展開に、これってホラー映画? それともSF映画? 神が本当に地上に出現したのか? この後、一体どうなっちゃうの? かなりパニクりました。
 
 キリスト教原理主義者への批判とも、銃社会への批判とも、テロリストは即銃殺OKというとんでもなく一方的な法律により強大な権力を持った政府への批判とも、いかようにもとれる、非情にブラックな風刺に満ちた映画です。取り扱っている内容が内容だけに、お子様には見せられませんし、テレビ放送もおそらくされないでしょう。しかし、こんな偏った世界、海の向こうの国の話だから、我々は大丈夫などと油断していたら、とんでもない目に遭いそうな、これは決して他人ごとじゃあないぞと言う気持ちになったりするような、たいへん有意義な映画ですので、機会があれば是非ご覧になることをお薦めします。  

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