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2013/05/11

吉村龍一「光る牙」感想

 セガのゲームに「龍が如く」という、ヤクザが主人公のシリーズ物があります。1作目からずっとプレイしているので、去年の暮れに発売された5作目も、当然プレイいたしました。たいへん楽しいゲームでした(ヤクザが主人公なので、暴力シーンが多く、そのため年齢制限がかかっています。ご注意下さい。)。このゲーム、主人公が5人ほど登場します。1章ごとに主人公が変わり、最終章でそれら5人のストーリーが一本にまとまっていくという多視点収束型ドラマです。
 二つ目の章に出てくるヤクザさんが、網走刑務所を脱走し北海道の山中を逃亡中に、巨大ヒグマの襲撃に遭い遭難。この巨大ヒグマは立ち上がると3メートルを超す巨体で、現地の猟師たちからはヤマオロシという名で呼ばれているのですね。瀕死のヤクザさんはたまたま通りかかったマタギ(猟師)に助けられ、九死に一生を得ます。傷が癒えるとともに、マタギに猟のノウハウや心構えを教わり、マタギのスピリットをも受け継ぎ、やがて立派な猟師に育つというストーリーになっております。狩猟時には射撃モードとなって、2連射のできる猟銃でクマを撃つシューティングゲームとなります。ところが、寒さのため、立っているだけでもじわじわと体力ゲージのメーターが減っていくのですね。ゼロになったら、即ち凍死。ものすごい緊迫感が、プレイヤーを襲います。さらに、極寒の雪山の中で構える銃身は、寒さのためか常に揺れ続け、ピタリと目標に合致する時間はほんのわずか。うっかり外そうものなら、猛然とこちらにダッシュしてくるヒグマから、2発目の照準を合わせる暇もなく、確実に爪の一撃を食らってしまうという、緊迫感に満ちた物なのです。食料の乏しい極寒の山村に、肉を持ち帰ることができるのか。やるかやられるか、お互いの命をかけた猟を何回も繰り返す内に、自分の力が自然の中ではいかに小さいものであるかということの実感と、ヒグマに対する畏敬の念が自然にわき上がってくるという、とんでもなく有難い経験ができるゲームでした。
 都会から、金にモノを言わせて、高価な装備で大型ほ乳類を狩ることを楽しみとするハンターがやってきます。地元猟師たちの制止にも耳を貸さず、大型ヒグマを仕留めることを目標にひとり雪山に入り込みます。その際、なんとダイナマイトを使ってクマをおびきだそうとするのですね。そういう狩猟はルール違反だし、山の生態系を壊すことになる。そんな地元猟師の心配や制止などお構いなしに、最新の銃があれば楽勝とばかり、自然をなめきって入山した彼は、お約束のように山の神であるヤマオロシの一撃を浴び、瀕死の重傷を負います。プレイヤーはそんな、救う価値のないと思われる男を救出するために雪山に入り込む、そんなドラマが描かれます。
 なんか、この小説と共通点多すぎなんですけど・・・(笑)。共通の元ネタとか、あるんでしょうかね?
 読売新聞の書評で角田光代氏が絶賛していたので、読んでみたのですが、既視感ありまくりでついつい苦笑いしてしまいました。また、ラストに近づくにつれ、ドラマを盛り上げようとする意識が作者に高すぎるのか、あちこち親父くさい過剰な表現が頻出し、思わず読み飛ばしたくなる事も何度か・・・。
 竹のスキー板には、雪温にあわせてワックスをかけると、最新のカーボンスキーよりもはるかに高い能力を発揮するだとか、四輪駆動車のエンジンがガソリンだと燃費が悪いのでプロパンのハイブリッドにしてあるだとか(ここクライマックスで重要なポイントとなります)、ナイフ研ぐのに砥石三枚使うだとか、道具にこだわるMONO系男子が読んだら夢中になること間違いなしの、女子からしたらどうでもいいであろうディティールが実に念入りに描かれているのも特徴です。・・ということは、本書を強く推薦した角田光代氏は、実は親父っぽい性格?
 最後、がんばった主人公には作者からささやかなご褒美が与えられます。このままうまく進展するといいのですが・・・。あと、読んでいてイクラがものすごく食べたくなりました。実に困った小説です。

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