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2013/05/05

吉田修一「路」感想

 「悪人」で一躍有名になった吉田修一氏の新作です。
 最近、インドに日本の新幹線を売り込む話が出てきているようですが、こちらは2007年に台湾に新幹線を走らせた男たち&女たちの話です。
 とはいっても、エンジニアが出てきて、電流やモーターがどうだの自動列車制御装置がどうだのと、鉄道マニアがのめりこみそうな話や、某国営放送の「プロジェクトなんたら」っぽい感動的ドラマとかは、残念ながらほとんどありません(いや少しはありますよ)。もっぱら台湾と日本との企業間交渉を軸にした人間ドラマを中心に、それプラス、台湾人が新幹線をどのように見、感じていたのか、新幹線車両整備工場で働くことになった青年とその家族が、台湾人を代表して述べるような形で話はゆるゆると(台湾時間で)展開します。
 商社に勤めるヒロインは、東京に彼氏を置いて、台湾での海外勤務を始めます。当初は3年くらいで帰国するつもりだったのが、新幹線敷設計画は遅れに遅れ、気がついたら30歳過ぎてしまったけど、全然後悔するどころか、ますます生き生きと仕事に打ち込むという、そんな女性。
 そもそも彼女が台湾勤務を承諾した理由が、学生時代のちょっとしたアバンチュールが忘れられなくて・・・という、なんだかテレビドラマちっくな設定なんですが、でも本作、台湾人の文化や風土、そこから生まれる心のありようが、非情に細やかに描かれていて、読めば読むほど台湾が好きになってしまいます。だから、安易な設定なんですが、「いや台湾ならこれもありかな」と思えてきたりするのですね。
  各章ごとの扉に、当時の新幹線工事関係の新聞記事が載せられています。その結果、本作はフィクションなんだけど、読後感はやたらとリアルに感じてしまう、そういう仕掛けとなっております。
 

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