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2013/02/23

伊坂幸太郎「夜の国のクーパー」感想

去年の初夏に出版された本なのですが、伊坂幸太郎は人気が高く、図書館で予約したら、今頃順番がまわってきました。
 主人公は二人(?)います。妻に浮気されて気持ちの整理がつかず、釣り船で海に出たら遭難してしまった男。そして、猫のトム。猫と人間が会話するという設定ですから、本書は大人向けの寓話ということがわかります。
 最初は、国民から選抜されたクーパーの兵士が、クーパーを倒す旅に出る話。そして鉄国から攻めてきた兵士が国王を射殺し、外出禁止令を出す話が、猫のトムによって語られます。何のことやらちんぷんかんぷんです。が、伊坂幸太郎ですから、当然後ほど収束されます。
  約半分まで読んだところで、猫とネズミの交渉が始まります。
 猫とネズミの交渉が、鉄国と猫の国との交渉とだぶって見えます。
「我々の方から、決まった数の鼠を、あなたたちに差し出す。そのかわり、他の鼠には手を出さないでほしい」
 まるで、八岐大蛇に娘を差し出す古代の神話のよう。
 猫は鼠のリーダーに聞きます。どうやって差し出す鼠を選ぶのかと。
「それはこちらで選びます。説明をします。大事な役割があるのだと。猫と決闘するというのはどうでしょうか。あるいは、わたしたちが選んだ鼠たちを、あなたたちのために働かせてください。好きに使っていただければ。そのかわりに他の鼠は見逃してほしい。」
 ここまで読めば、ほとんどの読者がクーパーの話のからくりに気がつくでしょう。

 タイトルがなぜ「夜の国の・・・」となっているのか、理由を考えるのも面白いかも知れません。

「国王が国をまとめるためのこつを知っているか。外側に、危険で恐ろしい敵を用意することだ。そうした上で、堂々とこう言うんだと、『大丈夫だ。私が、おまえたちをその危険から守ってあげよう』そうすれば、自分を皆が頼る。反抗する人間は減る。」

 中盤でだいたいのからくりが読めてしまうので、いつもの伊坂幸太郎作品のように、終盤で見事に伏線がすべて収束していく爽快感はかなり薄い作品です。ただ、本作はそのようなことを狙って書いたのではないと思われます。

 外に敵を作って国民をまとめあげる政治手法、今まで、歴史の中で何度も繰り返され使われてきました。そして今、本書がどこの国のことを暗喩しているか、なんとなくわかります。でも一歩間違えば、我々日本も、誰かが作り上げた脅威におびえ、知らない間に為政者に操作されている可能性があったりします。最近の伊坂幸太郎作品は、常に自戒を呼びかけているような気がします。考えろ。考えろ。自分たちは誰かに操られていないか? 「ゴールデンスランバー」以後繰り返し使われている呼びかけ。

 自戒!

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